自己が家督相続人として選定されたことを理由として、戸籍簿上の家督相続人を排除し自己の家督相続人たる地位を回復することを目的とする請求は、戸籍簿上の家督相続人を相手方とする家督相続回復の訴によるべきであり、選定者を相手方として家督相続人たる地位の確認を求める訴は確認の利益を有しない。
家督相続人たる地位確認請求が確認の利益を欠くとされた事例
民訴法225条,旧民法966条(昭和22年法律第222号による改正前のもの)
判旨
家督相続人たる地位の回復を目的とする訴えについて、特定の相手方に対する相続回復の訴えという法定の手段が存在する場合、それ以外の方法による請求は即時確定の利益を欠き、不適法である。
問題の所在(論点)
特定の相手方(訴外E)が戸籍上の相続人となっている状況で、被上告人に対し自己の相続人たる地位の回復を求める訴えが、確認の利益(即時確定の利益)を有し、有効適切な紛争解決手段といえるか。
規範
特定の権利関係をめぐる紛争を解決するための有効適切な法的手段が法律(旧民法966条等)に定められている場合、その手段によらずになされた確認請求等は、即時確定の利益を欠き、不適法な訴えとして却下される。
重要事実
上告人は、昭和21年に被上告人から戸主Dの家督相続人として選定されたと主張し、戸籍簿上の家督相続人である訴外Eを排除して、自らの家督相続人たる地位の回復を目的とする本訴を提起した。しかし、本件は旧民法下の家督相続に関する紛争であった。
あてはめ
上告人の請求は、家督相続人たる地位の回復を目的とするものであるが、旧民法966条はこのような場合に「相続回復の訴え」を定めている。本件では当該規定に従い、戸籍上の相続人である訴外Eを相手方として訴えを提起すべきである。したがって、被上告人を相手方とする本訴請求は、当事者間の紛争を解決する手段として有効適切とは認められず、即時確定の利益を欠く。
結論
本訴請求は不適法であり、却下を免れない。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
訴えの利益(確認の利益)における「方法の選択の適切性」に関する判例である。特定の権利関係について法定の特別の訴訟手続(相続回復の訴えや人事訴訟等)が用意されている場合、それによるべきであり、一般的な確認の訴え等は許されないという法理を、旧民法の家督相続の文脈で示したものである。
事件番号: 昭和28(オ)805 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戸主による家督相続人の指定は、指定権者にその決意があると認められ、かつ、その旨の届出が市町村長に受理された場合には、その効力を有する。 第1 事案の概要:戸主Dは、死亡前の十数年間にわたりEと事実上の夫婦関係にあった。Dは、Eの実弟である被上告人を自らの家督相続人に指定する決意を有していた。昭和1…
事件番号: 昭和40(オ)467 / 裁判年月日: 昭和42年4月28日 / 結論: 棄却
新民法施行後は、旧民法によつてされた家督相続人選定親族会決議の無効確認を求める訴の利益はない。
事件番号: 昭和24(オ)302 / 裁判年月日: 昭和26年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧慣等に基づく家督相続人の指定において、当該指定がなされた事実に加え、指定者にその意思を欠く事情が認められない場合には、適法な指定があったものと解される。 第1 事案の概要:上告人において、本件家督相続人の指定が自らの意思に基づかないものであると主張し、原判決の事実認定に経験則違背があるとして争っ…
事件番号: 昭和27(オ)990 / 裁判年月日: 昭和30年1月21日 / 結論: 棄却
法定の推定家督相続人がその相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属は代襲相続をする権利を有しない。