判旨
親族会決議の有効性を判断する際、議決権を行使した親族に「直接の利害関係」があるか否かは、決議時における実情を基礎として判断すべきである。
問題の所在(論点)
旧民法下の親族会決議において、親族会会員(B)が議決事項(子の相続人選定等)に関与することが「直接の利害関係」を有する者による議決として無効事由となるか。
規範
親族会の決議が有効であるか否かを判定するには、その決議があった際における実情を基礎とすべきである。また、親族会会員が議事に対し「直接の利害関係」を有するとは、当該決議の結果によって自己の権利義務に直接的な影響を受ける場合を指し、単に事実上の影響を受けるに過ぎない場合は「間接の利害関係」に留まる。
重要事実
未成年者D(大正15年生)の家督相続人選定等に関する昭和21年の親族会決議において、Dの親権者であるBが議決に加わった。上告人は、BがDと同居しており相続財産を事実上自由に処分し得る立場にあること等を理由に、Bは「直接の利害関係」を有し、決議は無効であると主張した。
あてはめ
Dが決議当時20歳間近(19歳)であり成年に近かったという実情に照らせば、Bは親族会の議事に間接の利害関係を有するに過ぎない。また、Dが相続財産の所在地に居住せずBと同居していたとしても、Dが家督相続人になることでBが相続財産を事実上自由に処分し得る立場になるとまでは断じ難い。したがって、Bが決議に加わったことは直接の利害関係を有する者の関与には当たらない。
結論
Bは直接の利害関係を有する者とは認められず、本件親族会決議は有効である。
実務上の射程
現在は親族会制度は廃止されているが、株主総会や理事会の特別利害関係人の判定において、本判例の「決議当時の実情を基礎とする」という時間的基準や、「直接・間接の利害関係」を峻別する態様は、解釈上の参考となり得る。
事件番号: 昭和24(オ)267 / 裁判年月日: 昭和26年8月31日 / 結論: 棄却
一 家督相続人選定のために招集された親族会において、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げない。 二 家督相続人選定のために招集された親族会が、裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨を決議したときは、右の決議は無効ではなく、右の決議はその後裁判所の…
事件番号: 昭和26(オ)722 / 裁判年月日: 昭和29年6月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】旧民法下の親族会による家督相続人選定決議の取消には、決議内容が著しく不当であることを要し、単に血縁の欠如や親族の素行不良のみでは直ちに著しい不当とは認められない。 第1 事案の概要:親族会は、亡Eの家督相続人として血縁関係のないDを選定した。これに対し、Dは(1)家系との血縁がない、(2)内縁関係…
事件番号: 昭和24(オ)70 / 裁判年月日: 昭和25年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親族会員が、家督相続人の選定という決議事項の当事者の内縁の夫であっても、そのことのみをもって当該決議事項につき直接利害関係を有することにはならず、除斥の対象とはならない。 第1 事案の概要:亡Dの家督相続人を選定する親族会において、被上告人が候補者として選定されるかどうかの決議が行われた。この親族…
事件番号: 昭和27(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
親族会の招集期日の変更決定が、三名の会員中一名だけに送達されたため、右期日に他の二名が出席してなした決議も当然無効ではなく、訴により取消を求め得るにすぎない。