判旨
行政訴訟において、数個の投票の効力が争われている場合、一部の投票に関する判断に誤りがあっても、他の有効な判断によって結論に影響を及ぼさないときは、判決の結果を左右しない。
問題の所在(論点)
数個の投票の効力が争点となる選挙訴訟において、一部の投票の効力判断に誤りがある場合、それだけで当選の効力に関する判決全体が違法となるか。また、調書の記載に基づき手続の適法性をどう判断すべきか。
規範
特定の投票の効力に関する判断に誤りがあったとしても、他の証拠や事実認定に基づき、当該選挙の当選の効力に関する結論を維持できる場合には、判決の違法として破棄の理由とはならない。
重要事実
当選の効力が争われた事案において、原審は複数の投票(甲第1号証、甲第3号証等)の効力を個別に判断した。上告人は、原審が甲第3号証の効力判断を誤ったこと、および証人尋問の手続に不備(代理人の出頭記載漏れ等)があったことを理由に上告した。
あてはめ
甲第1号証の投票の効力に関する原判決の判断は正当である。そうであれば、仮に甲第3号証の効力判断に誤りがあったとしても、本件当選の効力に関する最終的な結論を左右するものではない。また、弁論調書に証人尋問調書が編綴されている以上、尋問は施行されたと認められ、代理人の出頭記載がない以上は不出頭とみなすのが相当であり、手続違法も認められない。
結論
一部の投票の効力判断に仮に誤りがあっても、当選の効力という結論に影響しない限り、上告は棄却される。
実務上の射程
選挙訴訟等、複数の個別事実(投票の効力等)を積み上げて一つの法的結論(当選の適否等)を導く事案において、一部の認定誤りが直ちに判決の結果に影響しないという「理由の差し替え」や「結論の維持」の論理を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)237 / 裁判年月日: 昭和31年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、投票用紙に記載された文字が判読可能であり、かつ候補者の氏名と同一または類似する場合には、当該投票は有効と解される。本判決は、原審の事実認定および効力判定に法令違背がないとして上告を棄却した。 第1 事案の概要:本件は、選挙における各投票の効力が争われた事案であ…
事件番号: 昭和31(オ)729 / 裁判年月日: 昭和31年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、投票用紙に記載された氏名等が候補者の誰を指すかにつき、客観的な記載内容のみならず証拠に基づき合理的に推認できる場合には、当該投票は有効と解される。 第1 事案の概要:上告人は、本件選挙における特定の係争投票について、その記載内容から候補者を特定できない等の理由…
事件番号: 昭和35(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票用紙に候補者の氏名のほか「江」という敬称を付す記載は、公職選挙法68条5号の他事記載に該当し無効である。一方で、氏名の誤記や他候補者の氏名との混同がある場合でも、他候補者の氏名等と比較して特定の候補者に対する投票意思が認められれば有効となる。 第1 事案の概要:村長選挙の効力に関する訴訟におい…
事件番号: 昭和35(オ)493 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、候補者の氏名を正確に記載していない投票であっても、その記載内容から特定の候補者を指すと客観的に認められる場合には、当該候補者に対する有効投票として認められる。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、被上告人(候補者)に対するものと考えられる投票の中に、「D…
事件番号: 昭和31(オ)260 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
候補者にB和夫とD一男とがある場合に「B一男」と記載された投票は、B和夫に対する有効投票と解するを相当とする。