判旨
上告審において原審の証拠の取捨判断及び事実認定の適否を争うことは、単なる事実誤認の主張にすぎず、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
事実認定の当否や証拠の取捨選択に関する不服が、適法な上告理由(法律上の主張)として認められるか。
規範
上告審は法律審であり、原審が適法に行った証拠の取捨判断及び事実認定は、特段の事情がない限りその裁量に属し、これらを非難することは適法な上告理由とはならない(旧民事訴訟法401条、現行法312条等参照)。
重要事実
上告人が、原審における証拠資料の評価や事実認定のプロセスに不服があるとして、過去の判例を引用しつつ原判決の取消しを求めて上告した事案。
あてはめ
本件において、原審が提示した証拠資料に基づく事実認定の過程は合理的なものとして肯認できる。上告人の主張は、本質的に原審の適法な証拠取捨および事実認定を非難するものに留まっており、引用された判例も本件の具体的な事実関係に照らせば適切ではない。したがって、原判決に上告理由となるような法令違反は認められない。
結論
本件上告は棄却される。原審の事実認定を争う主張は、適法な上告理由に該当しない。
実務上の射程
本判決は、事実認定の不当性を理由とする上告の限界を示すものである。実務上、上告理由書を作成する際には、単なる事実誤認の主張(事実非難)ではなく、憲法違反や重大な訴訟手続の違反、または判例違反といった「法の解釈誤り」として構成する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和31(オ)273 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自由心証主義に基づく事実認定において、採用した証拠が経験則や論理則に合致し、不採用とした証拠との対比が判決文上明確であれば、証拠申出の一部を排斥しても自由心証の範囲内であり、理由不備等の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)の事実認定に際し、民事訴訟法185条(現247条相当)に…