判旨
自由心証主義に基づく事実認定において、採用した証拠が経験則や論理則に合致し、不採用とした証拠との対比が判決文上明確であれば、証拠申出の一部を排斥しても自由心証の範囲内であり、理由不備等の違法はない。
問題の所在(論点)
裁判所が特定の証拠を採用し、他の証拠を排斥して事実認定を行う際、どのような場合に自由心証主義の限界を逸脱した違法(あるいは理由不備)とされるか。
規範
事実の認定は、裁判所の自由な心証に委ねられる(自由心証主義)。その認定が、常識的な経験則に合致し、かつ論理的整合性を有しており、不採用とした証拠との関係が判決文上明らかである限り、裁判所の合理的な裁量の範囲内として適法とされる。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)の事実認定に際し、民事訴訟法185条(現247条相当)に違反する自由心証の濫用や、特定の証拠(乙1、2、4号証)を適切に評価しなかった理由不備の違法があると主張して上告した。原審は、特定の証言や供述を採用する一方で、それに反する証拠を排斥して事実を認定していた。
あてはめ
本件では、原審が採用した証拠は常識的な経験則と一致し、論理的な一貫性も認められる。不採用とされた証拠については、採用証拠と相反するものであることが記録上確認でき、その趣旨も判決文から明らかである。また、上告人が主張する証拠(乙1等)が真正に成立したと仮定しても、その記載内容は原審の事実認定を覆すに足りないものであることが容易に判断できる。
結論
原審の事実認定に自由心証主義の逸脱や理由不備の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自由心証主義に関する基本判例である。答案上では、事実認定の合理性を論証する際、経験則・論理則との合致、および反対証拠を排斥する理由の明示という要素を検討するための指標となる。
事件番号: 昭和31(オ)1021 / 裁判年月日: 昭和33年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、当事者が提出した新抗弁事実に対し、既存の証拠によってそれと相容れない事実が認定できる場合には、当該抗弁や証拠調べを必要ないものとして退けることができる。 第1 事案の概要:上告人は、原審の第一回口頭弁論において新たな抗弁事実を陳述し、その立証のために人証を申請した。しかし、原審は当該申請…