判旨
刑事判決において認定された事実であっても、民事裁判所はこれに拘束されるものではなく、自由心証主義に基づき独立して事実を認定することができる。
問題の所在(論点)
刑事判決における事実認定が、後続の民事訴訟における事実認定を拘束するか(自由心証主義の限界、または争点効の成否)。
規範
民事訴訟における事実の認定は、裁判所の専権に属する。刑事訴訟と民事訴訟は、その目的、立証の程度、証拠法則等を異にするため、確定した刑事判決において示された事実認定であっても、民事裁判所はこれに拘束されず、提出された証拠に基づき独立して判断を行うべきである。
重要事実
上告人と被上告人等との間における消費貸借の成否が争われた事案。上告人は、刑事判決において本件に関わる特定の事実認定がなされていることを根拠に、原審(民事判決)がそれと異なる認定をしたことを不当として上告した。
あてはめ
刑事判決において所論のような事実認定がなされていたとしても、民事裁判所において同様の認定をしなければならない法的拘束力は存在しない。原審は、挙示された証拠に照らして本件消費貸借の成立を認めており、これは裁判所の合理的な証拠の取捨選択および事実認定の範囲内にある。したがって、刑事判決と異なる認定がなされたとしても、直ちに違法とは認められない。
結論
刑事判決の事実認定に民事判決が拘束されることはなく、原審の事実認定は首肯できるため、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事判決の証拠力(特信性)については考慮の余地があるが、法的拘束力(既判力や争点効)を否定する場面で活用する。自由心証主義(民訴法247条)の原則を説明する際の基礎判例となる。
事件番号: 昭和31(オ)273 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自由心証主義に基づく事実認定において、採用した証拠が経験則や論理則に合致し、不採用とした証拠との対比が判決文上明確であれば、証拠申出の一部を排斥しても自由心証の範囲内であり、理由不備等の違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)の事実認定に際し、民事訴訟法185条(現247条相当)に…