判旨
事実認定における証拠の選択及びその判断は、特段の事情がない限り原審の専権に属し、経験則や採証法則に反しない限り適法である。
問題の所在(論点)
事実審における証拠の取捨選択および事実認定が、上告審において破棄の対象となる違法なものといえるか(民事訴訟法における自由心証主義の限界と上告理由)。
規範
事実の認定及びその基礎となる証拠の取捨選択は、論理則、経験則に照らして不合理な点がない限り、事実審裁判所の自由な心証(自由心証主義)に委ねられる。事実誤認、経験則違反または採証法則違反が認められない限り、上告審が原審の事実認定を覆すことはできない。
重要事実
上告人は、本件金10万円の貸借関係において利息や損害金の支払義務等を主張したが、原審は関係証拠に基づき、期間中無利息の貸借が成立したこと、乙第1号証(書証)が真正に成立したものではないこと、および元金・利息等の弁済が認められないことを認定した。これに対し上告人は、原審の認定には事実誤認や採証法則違反があるとして上告した。
あてはめ
本件において、原審が提示した証拠によれば、金10万円の無利息貸借の成立や証書の不真正、弁済の事実がないとする認定は十分に首肯できる。上告人が主張する事実誤認、経験則違反、採証法則違反といった点は、いずれも原審の適法な証拠判断および事実認定を独自の見解で非難するものにすぎず、特段の違法は認められない。
結論
本件上告には理由がないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、事実認定における事実審の広範な裁量を再確認するものである。答案作成上は、証拠の証明力判断や事実認定を争う場合、単なる事実の否定ではなく、いかなる経験則に反するか、あるいは論理的に矛盾しているかという「採証法則違反」の観点から具体的に論証する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和31(オ)802 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事判決において認定された事実であっても、民事裁判所はこれに拘束されるものではなく、自由心証主義に基づき独立して事実を認定することができる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人等との間における消費貸借の成否が争われた事案。上告人は、刑事判決において本件に関わる特定の事実認定がなされていることを根拠…