判旨
事実認定は裁判所の裁量権の範囲に属する事項であり、原審がその裁量権の範囲内で行った事実認定を不当として法令違反を主張することは、適法な上告理由にはならない。
問題の所在(論点)
事実認定の当否を争うことが、民事訴訟法における適法な上告理由となり得るか。特に、裁判所の裁量に属する事実認定の失当を理由とする法令違反の主張の可否が問題となる。
規範
事実の認定は、証拠の取捨選択を含め、裁判所の専権事項たる裁量に委ねられている。したがって、原審の認定がその裁量権を逸脱・濫用したと認められない限り、事実認定の不当を理由に法令違反を主張することは、適法な上告理由(民事訴訟法312条等)として認められない。
重要事実
上告人らは、原審(控訴審)が行った事実認定には誤りがあり、不当であると主張した。その上で、当該事実認定を前提とする原審の判断には法令違反があるとして上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、上告人らが主張する論旨は、結局のところ原審がその裁量権の範囲内で行った事実認定が不当であると非難するものにすぎない。このような主張は、証拠に基づき原審が合理的に判断した結果を争うものであり、判決に影響を及ぼすべき具体的な法令の解釈誤りや適用ミスを指摘するものとはいえない。したがって、裁量権の範囲内の事実認定を前提とする法令違反の主張は、上告理由としての適格性を欠く。
結論
本件上告は棄却される。原審の裁量に属する事実認定の不当をいう論旨は、適法な上告理由に当たらない。
実務上の射程
民事訴訟の答案作成において、事実誤認を直接的な上告理由として構成することはできないという原則を確認する際に有用である。実務上、上告理由を構成する際は、事実認定そのものではなく、経験則・論理則に反する採証法則違反など、裁量権の逸脱を「法令違反」として理論構成する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和31(オ)967 / 裁判年月日: 昭和32年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の適法な事実認定を争うにすぎない場合、原判決に影響を及ぼす明らかな法令の違背があるとは認められないため、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人らが原審による事実認定の不当を主張して上告を提起したが、その主張は原審の適法な事実認定を争うにとどまるものであった。 第2 問題の所在(…
事件番号: 昭和31(オ)289 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原審の適法な事実認定を非難するものにすぎない場合、民事訴訟法上の適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人らが原審の事実認定を不服として上告を提起したが、上告理由の内容は、原審の証拠評価や事実認定のプロセスに対する非難を主とするものであった。 第2 問題の所在(論点):事実…
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…
事件番号: 昭和33(オ)801 / 裁判年月日: 昭和36年2月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権譲渡における賃貸人の黙示的承認の有無について、個別の主張事実を排斥した上でそれらを総合しても承認の事実は認められないとした原判決に違法はない。 第1 事案の概要:上告人は、賃貸人から借地権譲渡について黙示的な承認を得たと主張した。これに対し、原審(控訴審)は上告人が主張した各事実について個別…