昭和二五年六月二一日から同年七月一三日までの間に、証券取引所の会員でない者が、会員に対し、いわゆる店頭取引として有価証券の売付を委託するにあたり、右有価証券を有しなかつたとしても、右売付委託は、証券取引法第一三三条に違反しない。
有価証券を有しないでする売付委託の効力
証券取引法133条,有価証券の空売に関する規則(昭和23年7月証券取引委員会規則16号),昭和27年7月法律270号(大蔵省設置法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法令の整理に関する法律)附則2項
判旨
複数の証拠を総合して事実認定を行う際、特定の証拠に一見矛盾する記載があっても、他の証拠との整合性や合理的な解釈が可能な範囲であれば、当該事実認定に経験則違反や理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
自由心証主義の下で、特定の証拠の記載内容が認定事実と一見抵触する場合に、その証拠の解釈を通じて認定事実との整合性を認めることが許されるか。
規範
事実の認定は、証拠の総合的な評価に基づく裁判官の自由な心証に委ねられる。特定の書証に反対の事実を示唆するような記載がある場合でも、その記載内容が合理的な解釈によって認定事実と両立し得るものであり、かつ他の複数の証拠が認定事実を裏付けている場合には、当該認定に採証法則違反の過誤はない。
重要事実
売買代金の額が争点となった事案において、原審は代金額を155万円と認定した。これに対し上告人は、証拠の一つである「甲第5号証」に、代金とは別に「約束の期日に明渡す謝礼金」に関する記載があることを根拠に、155万円という認定は証拠に反すると主張して上告した。なお、甲第5号証以外の各証拠(書証・人証)ではすべて代金は155万円とされていた。
あてはめ
本件において、甲第5号証には謝礼金に関する記載があるが、その具体的な金額は明記されていない。この記載は、謝礼金の名目を含む総額として代金を155万円と定めた趣旨であると解釈することが可能である。そうすると、甲第5号証の記載は「代金155万円」という認定と矛盾するものではない。また、他の全ての証拠が代金155万円を裏付けており、約束の期日に明渡しがなされなかった事実も認められない。したがって、証拠を総合して代金を155万円と認定した原審の判断は合理的である。
結論
原審の事実認定に違法はなく、代金155万円との認定を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、証拠の評価や事実認定は事実審の専権事項であり、経験則・論理則違反がない限り上告理由とはならない。答案上は、複数の証拠から一つの結論を導く際の「証拠の総合評価」のプロセスを示す際の参考となる。特に、一見不利な証拠をどのように「合理的な解釈」によって取り込むかという事実認定の手法を示唆している。
事件番号: 昭和30(オ)431 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が口頭弁論において証拠(書証)の成立を認めた場合、その成立に争いがないものとして扱われ、裁判所がこれに基づき事実認定を行っても違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)の口頭弁論において、証拠として提出された「甲第二号証」の成立を認める旨の陳述を行っていた。しかし、上告人…