判旨
金銭賠償を求める損害賠償請求訴訟において、裁判所が原告の主張する個別の損害項目ごとの金額を超えて損害額を認定し、支払を命ずることは、処分権主義に反し許されない。
問題の所在(論点)
損害賠償請求において、原告が損害の内訳として特定の項目および金額を主張している場合、裁判所がその個別の主張金額を超えて損害額を認定し、認容判決をすることは民事訴訟法246条(処分権主義)に抵触するか。
規範
処分権主義(民事訴訟法246条)に基づき、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決をすることができない。給付訴訟、特に損害賠償請求において、原告が損害の内訳として各項目の金額を特定して主張している場合、裁判所はその各項目の主張金額の限度によって拘束され、これを超える認定をすることは許されない。
重要事実
不法行為に基づき物品(戸棚2個、飾戸1個、窓硝子5枚等)を破壊されたとして損害賠償を求めた事案。被上告人(原告)は、戸棚合計3,000円、飾戸2,000円、窓硝子合計350円等と個別に損害額を主張していた。しかし、第一審および原審は、戸棚3,200円、飾戸2,500円、窓硝子500円と認定し、被上告人の主張合計額を超える損害賠償の支払を命じたため、上告人が処分権主義違反を理由に上告した。
あてはめ
被上告人は、戸棚については3,000円、飾戸については2,000円、窓硝子については350円をそれぞれ損害額として主張している。これに対し、裁判所は戸棚について200円、飾戸について500円、窓硝子について150円、それぞれ被上告人の主張する金額を超えて損害を認定した。これは、当事者が申し立てた審判対象の範囲(申立の限度)を逸脱して判断を下したものであり、法令の適用を誤った違法があるといえる。
結論
裁判所が当事者の主張する個別の損害額を超えて認容することは処分権主義に反し違法である。したがって、主張額を超える部分に関する原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
処分権主義(246条)の基本判例である。訴訟物の特定に関連し、損害賠償請求において損害項目ごとの拘束力を認める立場(旧訴訟物理論との親和性)を示すものとして答案で引用する。反対に、総額において主張の範囲内であれば個別項目の超過は許容されるとする見解(総額説)と比較して検討する際に重要となる。
事件番号: 昭和43(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和48年6月7日 / 結論: 棄却
不法行為による損害賠償についても、民法四一六条の規定が類推適用され、特別の事情によつて生じた損害については、加害者において右事情を予見しまたは予見することを得べかりしときにかぎり、これを賠償する責を負うものと解すべきである。