判旨
債務者が債権譲渡に対し、譲受人に対して絶対責任をもって完済する旨を確約して「異議を留めない承諾」をした場合、譲渡人に対して主張し得た事由をもって譲受人に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
債務者が債権譲渡に際し、譲受人に対して「絶対責任をもって完済する」旨を確約して承諾を与えた場合、民法468条1項(改正前)の「異議を留めない承諾」に該当し、譲渡人に対する抗弁が遮断されるか。
規範
債権譲渡について債務者が異議を留めずに承諾(旧民法468条1項)をした場合、公信力に似た効果が生じ、債務者は譲渡人に対して主張できた事由(相殺や弁済済みの事実等)をもって譲受人に対抗できなくなる。特に債務者が譲受人に対し、当該債務を「絶対責任をもって完済する」旨を確約した場合には、異議を留めない承諾としての効果が確定的に認められる。
重要事実
1. 譲渡人(有限会社)は、債務者(上告人)に対し、藁工品の売買代金27万790円の債権を有していた。 2. 譲渡人は、当該債権を譲受人(被上告人)に譲渡した。 3. 債務者は譲受人に対し、昭和27年2月28日付の書簡にて、本件債権譲渡について「絶対責任をもって完済する」旨を確約し、異議を留めずに承諾を与えた。 4. その後、債務者は譲渡人に対する何らかの抗弁事由(詳細は判決文からは不明)を主張して、譲受人への支払を拒んだ。
あてはめ
本件において、債務者は単に譲渡の事実を認めただけでなく、譲受人という新たな債権者に対し、書簡をもって直接に「絶対責任をもって完済する」という強い支払の意思表示を行っている。このような表示は、譲渡人に対して有していた一切の抗弁を放棄し、債権の存在を無条件に承認したものと評価される。したがって、仮に譲渡人に対して主張し得る事由があったとしても、異議を留めない承諾をした以上、その主張をもって譲受人に対抗することは許されない。
結論
債務者は異議を留めない承諾をしたものと認められ、譲渡人に対する事由をもって譲受人に対抗できないため、譲受人の請求は認容される。
実務上の射程
現行民法468条1項下では、異議を留めない承諾による抗弁遮断効は原則として廃止され、譲受人の信頼保護は「抗弁の放棄」の意思表示や信義則(民法1条2項)の問題として処理される。本判例のような「絶対責任をもって完済する」という強い確約がある事例は、現行法下でも抗弁放棄の意思表示を認定する際の重要な考慮要素となる。
事件番号: 昭和49(オ)515 / 裁判年月日: 昭和52年4月8日 / 結論: 棄却
指名債権の債務者は、異議をとどめずに債権の譲渡を承諾した場合であつても、譲渡人に対抗することのできる事由があることについて悪意の譲受人に対しては、右の事由をもつて対抗することができる。