判旨
金銭債務において特段の合意があれば、債務者は分割債務ではなく、債務全額について不可分的に給付すべき義務を負う。契約書の文言に分割債務である旨の記載がなくても、諸般の証拠に基づき全額弁済の約定が認められれば、不可分債務としての責任を負う。
問題の所在(論点)
数人の債務者が金銭債務を負う場合において、契約書等に「分割債務」である旨の明示的な記載がないとき、債務者が全額の支払義務(不可分的な責任)を負うか。また、その責任の性質をどのように判断すべきか。
規範
金銭債務は、原則として分割債務(民法427条)となるが、当事者間に「債務の全額を弁済する」旨の特段の合意(約定)が認められる場合には、各債務者は不可分的に全額の給付義務を負う。この約定の有無は、書面の文言のみならず、諸般の証拠を総合して合理的に解釈される。
重要事実
上告人は、相手方に対して金5万円の支払債務を負っていた。当該債務に関する証書(甲第1号証)には、債務が分割債務であることを示す具体的な文言は記載されていなかった。第一審および原審は、当該証書に加え、他の証拠を総合的に検討した結果、上告人が本件債務全額を弁済すべき約定をしていた事実を認定した。これに対し、上告人は分割債務であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、契約書に分割債務である旨の記載がない事実は、直ちに分割債務であることを確定させるものではない。原審が証拠を総合して「上告人が本件金5万円全額を弁済すべき責に任ずる約定をした」と認定した事実に照らせば、上告人は約定に基づき不可分的に全額を給付すべき義務を負うものと評価される。したがって、分割債務であるとの上告人の主張は、認定された約定の事実に反し、排斥されるべきである。
結論
上告人は約定に基づき金5万円全額を不可分的に給付すべき責任を負う。分割債務であるとの主張は採用できない。
実務上の射程
金銭債務の不可分性・連帯性を肯定するための認定手法を示す。答案上、民法427条の原則を修正する「特段の合意」の認定において、書面の文言が不十分であっても、事実認定により全額弁済の約定が導かれれば、全額請求が可能であることを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)477 / 裁判年月日: 昭和34年6月19日 / 結論: その他
連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきである。