会社の資金とする目的で、同会社の専務取締役と使用人が共同して借金した場合には、右両名は連帯債務を負担する暗黙の合意があつたと認めるのが相当である。
連帯債務を負担する旨の暗黙の合意があつたと認められた事例。
民法432条
判旨
数人が共同して債務を負担する場合において、明示の合意がなくとも、諸般の事情から連帯して債務を負担する旨の黙示の特約が認められる場合には、連帯債務が成立する。
問題の所在(論点)
数人が共同して債務を負担する場合において、連帯債務の成立に「連帯」とする明示の意思表示が必要か、それとも「暗黙の特約」によって成立しうるか。
規範
数人が共同して債務を負担する場合、特約がない限り分割債務となるのが原則である(民法427条)。しかし、債務負担の経緯、債務の性質、目的、当事者間の関係等の諸事情を総合的に考慮し、当事者間に連帯して債務を負担する旨の「暗黙の特約」が認められる場合には、例外的に連帯債務が成立すると解すべきである。
重要事実
上告人(被告)とDは、被上告人(原告)に対して共同で債務を負担した。この際、書面等による明示的な連帯の合意は存在しなかった。一方で、その後Eが本件債務を免責的に引き受けたと主張される事情も存在した。第一審は、債務負担時の諸事情から連帯の暗黙の特約があったと認定し、原審もこれを維持したため、上告人が最高裁に上告した。
あてはめ
本件において、第一審判決が証拠に基づいて認定した諸事情を総合すれば、上告人とDが被上告人に対して債務を負担した際、両者の間に連帯とする「暗黙の特約」があったと認められる。このような事実上の判断は正当であり、明示の言及が欠けていたとしても結論を左右するものではない。また、Eによる免責的債務引受けの事実は認められず、上告人は依然として本件債務を負担していると評価される。
結論
共同債務者間に連帯の暗黙の特約が認められるため、上告人は被上告人に対し、連帯債務者としての責任を免れない。
実務上の射程
民法427条の分割債務の原則に対する例外として、黙示の合意による連帯債務の成立を認める実務上の確立した判断枠組みである。答案上は、債務の不可分性や共同の目的、人的関係を具体的事実から拾い、連帯の特約を推認する際の論拠として本判例を活用する。
事件番号: 昭和31(オ)431 / 裁判年月日: 昭和32年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭債務において特段の合意があれば、債務者は分割債務ではなく、債務全額について不可分的に給付すべき義務を負う。契約書の文言に分割債務である旨の記載がなくても、諸般の証拠に基づき全額弁済の約定が認められれば、不可分債務としての責任を負う。 第1 事案の概要:上告人は、相手方に対して金5万円の支払債務…