書証たる金員借用証の借主欄に甲乙両名の氏名が連記されているからといつて、右両名共同借受の事実を認定すべきではなく、諸般の事情から乙が甲を代理する関係を表示したものと解する余地があるから、この点に審理不尽、理由不備の違法がある。
書証の意義の解釈に審理不尽、理由不備の違法があるとされた事例。
民訴法185条,民訴法395条1項6号
判旨
借用証に複数名の氏名が連記されている場合であっても、直ちに共同借受と認定すべきではなく、当事者の資産状況や貸付けの経緯等の諸般の事情を総合的に考慮して、真の借主を認定すべきである。
問題の所在(論点)
借用証に複数名が連記されている場合に、書面上の記載のみから直ちに共同借受人と認定できるか。契約当事者の確定における認定手法が問題となる。
規範
契約の当事者の確定にあたっては、書面の記載という形式的側面のみならず、契約締結に至る経緯、当事者の属性、経済的目的、及び履行の態様等の諸般の事情を総合考慮して、当事者の合理的意志を客観的に解釈して判断すべきである。
重要事実
上告人らは、被上告人(夫)およびその妻Dの連名で「借主」と記載された借用証に基づき金員を貸し付けた。被上告人は「E銀行」と呼ばれるほどの資産家で貸金業を営んでいたが、妻Dにはみるべき資産がなかった。上告人らは被上告人の事業資金として高利での回収を期待して貸し付け、実際に被上告人から利息の支払を受けていた。また、貸付けに際して被上告人本人への確認や、後日の借受事実の確認もなされていた。原審は、借用証の連名記載を重視し、共同借受であると認定した。
あてはめ
本件では、書面上は連名であっても、実質的には被上告人の信用と事業を目的とした貸付けである。妻Dは無資力であり、交渉の窓口に立ったに過ぎない。上告人らが被上告人の資力を信頼して貸し付け、被上告人も自ら借りた旨を認めるなどの事情を考慮すれば、連名の記載はDが被上告人を代理する関係を不完全に表示したもの、あるいは形式的な記載に過ぎないと解する余地がある。これらの諸般の事情を考慮せず、書面の記載のみで共同借受と断じた原審の判断は、審理不尽・理由不備がある。
結論
借用証に連名があるからといって直ちに共同借受と認定することはできず、実質的な諸事情を考慮した上で、被上告人の単独借受けか否かを再検討すべきである。
実務上の射程
契約当事者の確定に関するリーディングケース。答案では「契約当事者の確定」が問題となる場面(無権代理と表現責任の境界や、他人の氏名を利用した契約など)において、形式的な名義のみならず、実質的な帰属主体を認定するための判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1380 / 裁判年月日: 昭和39年9月22日 / 結論: 棄却
会社の資金とする目的で、同会社の専務取締役と使用人が共同して借金した場合には、右両名は連帯債務を負担する暗黙の合意があつたと認めるのが相当である。