出張所長の名称使用を許容されていても商法第四二条の表見支配人と認められないとされた事例。
判旨
「出張所長」という名称の使用を許容していたとしても、直ちに商法42条(現行商法24条、会社法13条)の表見支配人の規定を適用することはできない。
問題の所在(論点)
「出張所長」という名称が、商法42条(現行会社法13条)の表見支配人にいう「支店の営業の主任者たることを示すべき名称」に該当するか。
規範
商法42条(現行会社法13条)にいう「本店の営業の主任者たることを示すべき名称を付したる使用人」とは、裁判上の権限をも含む包括的な代理権を有する支配人と同様の職位にあると一般に認識される名称を冠する者を指す。したがって、特定の場所における営業の主任者を示す名称であっても、それが直ちに支配人と同様の権限を示唆するものとは限らず、名称の実態や社会的信頼の程度に応じて判断されるべきである。
重要事実
会社Eは、その出張所において訴外Dに対し「出張所長」という名称を使用することを許容していた。Dがこの名称を用いて行った取引につき、相手方(上告人)が商法42条(表見支配人)の規定に基づき、会社に対してその責任を追及した事案である。
あてはめ
判決文によれば、たとえDが「E出張所長」という名称を使用することを許容されていたとしても、その名称が「支店の営業の主任者」すなわち支配人と同等の権限を有することを示す名称であるとは認められない。出張所という組織の性質や、そこにおける所長という呼称が、一般的に支配人としての包括的代理権を象徴するものとは解されないため、同条の適用は否定される。
結論
「出張所長」は、原則として商法42条(現行会社法13条)の表見支配人の名称には該当しない。
実務上の射程
本判決は、表見支配人の成否において「名称の重要性」を厳格に解したものである。答案上では、会社法13条の「名称」の該当性を論じる際、「支店長」「支配人」等の典型例と比較し、「出張所長」や「出張所主任」などは、特段の事情がない限り、包括的代理権を推認させる名称には当たらないとする根拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)393 / 裁判年月日: 昭和38年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見支配人の規定(旧商法42条、現行会社法13条等)の適用に関し、支店設置の登記がある支店において、支店長という名称を付された使用人は、裁判外の行為につき当該支店の支配人と同一の権限を有するものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人(被告・控訴人)である会社は、D支店を設置し、その旨の登記をなし…