保険会社の支社が、新規保険契約の募集と第一回保険料徴収の取次のみをその業務とし、保険会社の基本的事業行為たる保険契約の締結、保険料の徴収ならびに保険事故ある場合の保険金の支払業務を独立してする権限、組織を有しない場合、その支社長は商法第四二条にいう「支店」の営業の主任者にはあたらない。
保険会社の支社長が商法第四二条にいう「支店」の営業の主任者にあたらないとされた事例
商法42条,保険業法42条
判旨
表見支配人の規定(旧商法42条、現行会社法13条)が適用されるためには、当該拠点が名称等の外観だけでなく、営業所としての実質を備えている必要がある。
問題の所在(論点)
会社法13条(表見支配人)の適用要件である「本店又は支店」の意義、および特定の業務に限定された出先機関がこれに該当するか。
規範
会社法13条(旧商法42条)にいう「本店又は支店」とは、商法上の営業所としての実質を備えているものを指し、単に名称・設備等の外観を呈するにすぎない場所は含まれない。ここでの実質とは、主たる事務所から離れて、一定の範囲において対外的に独自の事業活動をなし得る組織を有する従たる事務所であることを要する。
重要事実
生命保険会社である被上告会社のD支社において、支社長Eが行った行為の効力が会社に及ぶかが争われた。D支社の業務実態は、新規保険契約の募集と第1回保険料徴収の取次のみに限定されており、保険契約の締結、継続的な保険料の徴収、保険金の支払といった保険会社の基本的業務を独立して行う権限を有していなかった。
あてはめ
被上告会社の基本的業務は保険契約の締結や保険金支払等であるが、D支社は募集と取次という補助的業務のみを担い、独自の事業活動を行う権限を欠いていた。したがって、D支社は対外的に独自の事業活動をなすべき組織としての実質を備えておらず、法上の「支店」には当たらない。その結果、D支社長Eも「支店の営業の主任者」に準ずる者とは認められない。
結論
D支社は「支店」としての実質を欠くため、会社法13条(旧商法42条)の適用はなく、支社長Eの行為について同条に基づく会社の責任は否定される。
実務上の射程
本判決は、表見支配人の規定が「場所的外観」と「権限的外観」の双方を基礎としていることを示唆する。答案上は、単なる名称(支店・支社)だけでなく、その拠点の業務権限や独立性といった実質的要素を検討する際の指標となる。ただし、現代の実務上は、名称を付したことによる権利外観責任(会社法11条、15条等)との関係で、本判決の「実質」要件が厳しすぎないか慎重な検討を要する場合がある。
事件番号: 昭和37(オ)165 / 裁判年月日: 昭和39年3月10日 / 結論: 棄却
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