会社出張所が、小工事については緊急を要するときは本社に連絡することなく、請負契約を締結し、そのために必要な資材の購入、代金の支払等をしているときは支店としての実質を具えているものというべく、同出張所長は、商法第四二条により、同出張所の営業に関し支配人と同一の権限を有するものとみなすべきである。
出張所長が商法第四二条の表見支配人にあたるとされた事例。
商法42条
判旨
出張所であっても、営業上の重要事項を独自の判断で決定・執行する実質を備えている場合には、会社法上の支店(商法旧42条の営業所)に該当し、その長は表見支配人としての権限を有する。
問題の所在(論点)
「出張所」という名称の組織であっても、商法旧42条(現会社法14条1項等)が定める「支店(営業所)」に該当し、その長が支配人と同一の権限を有するとみなされるか。
規範
商法旧42条(現会社法13条、14条等参照)にいう「本店の営業の範囲内においてその営業に関し支配人と同一の権限を有するものとみなされる」営業所(支店)とは、その名称にかかわらず、当該組織がその業務の点において支店としての実質を具えていることを要する。ここでいう実質とは、本社から独立して、その営業範囲内において一定の営業活動を自己の判断で決定し、外部との取引を完結させる権限を有している状態を指す。
重要事実
建設会社AのD出張所において、出張所長が、緊急を要する小規模な請負工事について本社の指示を仰ぐことなく独自に内容を検討して契約を締結していた。また、当該契約の遂行に必要な資材の購入やその代金の支払等についても、出張所長の裁量で適宜行っていた。このような状況下で、出張所長が手形を振り出した行為の有効性が問題となった。
あてはめ
D出張所は、単なる連絡場所や補助的組織に留まらず、小工事の請負契約の締結や資材購入、代金支払といった営業活動を、本社の具体的指示を待たずに遂行していた。これは、一定の営業範囲内において意思決定の独立性と外部取引の完結性を有していることを意味し、業務実態から見て「支店としての実質を具えていた」と評価できる。営利会社の営業範囲内には手形の振出も含まれるため、出張所長は当該営業に関し支配人と同一の権限を有するものとみなされる。
結論
D出張所は支店としての実質を具えているため、その長は商法旧42条により営業に関し支配人と同一の権限を有する。したがって、出張所長による手形の振出行為は会社を拘束する。
実務上の射程
本判決は、商法・会社法上の「支店」の意義について形式的な名称ではなく実質的に判断する基準(支店実質説)を示したものである。答案上は、組織の独立性(意思決定権、契約締結権、資金管理権の有無等)を具体的事実から認定し、表見支配人の規定を適用する際の論拠として用いる。
事件番号: 昭和33(オ)848 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
会社の東京出張所が或る範囲において、本店から離れて独自に営業活動を決定し、対外的に取引をなしうる組織を有し、支店たる実体を備えている場合には、その出張所長は商法第四二条の表見支配人にあたる。