肥料販売会社の支店管下の出張所が、相場の著しい変動ある肥料の仕入にはとくに右支店の許可を要するが、それ以外はこれを要せずに仕入をすることもでき、年間四千万円にも達する肥料を所在県下に販売し、それに伴う運送ならびに代金の回収等を行い、出張所長の下に三名の職員を使用し、職員の給料を除いて日常経費を原則としてその取立金でまかなう等判示のようなものであるときは、右出張所を商法上の支店と解して妨げないから、同出張所長は、商法第四二条の表見支配人にあたると解すべきである。
出張所長が商法第四二条の表見支配人にあたるとされた事例。
商法42条
判旨
商法上の支店とは、名称や登記の有無にかかわらず、本店から離れて独自の営業活動を決定し、対外的な取引をなしうる地位にある実体を有するものを指し、その責任者は表見支配人に該当し得る。
問題の所在(論点)
商法24条(旧42条)にいう「支店」の意義、および登記のない「出張所」という名称の拠点が同条の支店に該当するか。
規範
商法上の支店とは、その営業所の名称や登記の有無によって決まるものではなく、実体によって決すべきである。具体的には、単に機械的に取引を処理する出先機関ではなく、一定の範囲において本店から離れて独自の常業活動を決定し、対外的にも取引をなしうる地位にある営業拠点をいう。
重要事実
上告会社(肥料販売業者)のD出張所は、F支店の管下にありながら、相場変動が激しい場合を除き独自の判断で仕入を行い、高知県下で年間約4000万円もの肥料販売・代金回収・運送業務を行っていた。同出張所には所長以下3名が勤務し、給料を除く日常経費は自ら回収した代金で賄われ、銀行口座も開設されていた。この出張所長Iが手形を振り出したことから、商法24条(現行13条、旧42条)の表見支配人の責任が問われた。
あてはめ
D出張所は、一定の範囲内(肥料販売業務)において、本店から独立して独自の判断で仕入や販売等の営業活動を決定・遂行しており、単なる機械的な出先機関とはいえない。また、自前の経理処理や銀行口座の保有など、営業拠点としての実体も備えている。したがって、たとえ「出張所」という名称であっても、実体として「支店」に該当すると評価できる。その長であるIは、支店の営業の主任者たる外観を有しており、表見支配人としての責任を免れない。
結論
D出張所は商法上の支店と解して妨げなく、その所長であるIは、商法24条(旧42条)にいう表見支配人に該当する。上告人の責任を認めた原判決は妥当である。
実務上の射程
商法24条の適用において、営業拠点の「名称」や「支店登記の有無」は決定的要素ではないことを示した。司法試験においては、当該拠点が「営業上の意思決定の独立性」や「対外的な取引実態」を備えているかを事実から抽出してあてはめる際の基準となる。
事件番号: 昭和34(オ)285 / 裁判年月日: 昭和37年9月13日 / 結論: 棄却
会社出張所が、小工事については緊急を要するときは本社に連絡することなく、請負契約を締結し、そのために必要な資材の購入、代金の支払等をしているときは支店としての実質を具えているものというべく、同出張所長は、商法第四二条により、同出張所の営業に関し支配人と同一の権限を有するものとみなすべきである。