中小企業等協同組合法にいう「従たる事務所」とは、主たる事務所から離れて一定の範囲内で独自に当該協同組合の事業に属する取引を決定、施行しうる組織の実体を有するものをいう。
中小企業等協同組合法にいう「従たる事務所」の意義。
中小企業等協同組合法44条,商法38条1項,商法38条3項,商法39条,商法41条,商法42条
判旨
表見支配人の規定(商法24条、現行13条)が適用される「支店」等とは、主たる事務所から離れて独立して営業上の意思決定を行い得る組織的実体を有するものをいう。単に主たる事務所の指揮命令に従い機械的な事務を処理するに過ぎない営業所はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
商法24条(現行13条)の表見支配人の規定が適用される前提となる「支店」(従たる事務所)の意義、および組織的実体の判断基準。
規範
「支店」(中小企業等協同組合法における「従たる事務所」)とは、一定の範囲内において主たる事務所から離れて独自に当該組合の事業に属する取引を決定し、施行しうる組織の実体を有することを要する。単に主たる事務所の指揮命令に従い、機械的取引をするに過ぎないものはこれに該当しない。
重要事実
米穀卸協同組合(被告)の営業所長Dは、本来手形振出権限がなかったが、営業所名義で原告から融資を受けるため手形を振り出した。当該営業所は、米の配給や集金、本部指示に基づく買入れ等の業務を行っており、部下の指揮監督や預金口座の開設も行っていた。原告はDに権限があると信じていたが、当時の米穀販売は配給統制下にあり、営業所には独自の意思決定の余地が乏しかった。
あてはめ
Dの勤務する営業所は、部下の監督や預金口座の保有等の事実はあるが、主要業務である米の販売については配給統制下で本部の決定を執行するに過ぎず、玄麦等の買入れも本部の指示に基づいていた。このように、一定の範囲で本部の指示監督から離れて独自に取引を決定・施行しうる組織の実体があるとは認められない。したがって、単なる機械的取引を行う場所であって「従たる事務所」には当たらないと評価される。
結論
当該営業所が「従たる事務所」に該当しない以上、Dは表見支配人には当たらず、被告組合は手形責任を負わない。原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
支店の実体判断において「営業上の意思決定の独立性」を重視する基準を示した。答案上、営業所長等の名称を付した使用人の行為が問題となる場面で、まず場所的要件(支店該当性)を論じる際の必須規範となる。店舗の規模や外形だけでなく、内部的な権限委譲の程度という実態面を重視すべき点に射程がある。
事件番号: 昭和33(オ)848 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
会社の東京出張所が或る範囲において、本店から離れて独自に営業活動を決定し、対外的に取引をなしうる組織を有し、支店たる実体を備えている場合には、その出張所長は商法第四二条の表見支配人にあたる。