中小企業等協同組合法に基づく協同組合の営業所について、「従たる事務所」の登記がある場合には、右営業所が同法第四四条第一項にいう「従たる事務所」の実体を有していなくても、商法第一四条を類推適用し、右の実体を有しないことをもつて善意の第三者に対抗しえないものと解すべきである。
中小企業等協同組合法に基づく協同組合について「従たる事務所」の登記がある場合と商法第一四条の類推適用の有無
中小企業等協同組合法44条,商法42条,商法14条
判旨
中小企業等協同組合において、実質的な支店実体を有しない営業所が従たる事務所として登記されている場合、商法14条(不実登記)を類推適用し、善意の第三者に対して当該営業所の主任者を参事(表見支配人)とみなして責任を負う。
問題の所在(論点)
中小企業等協同組合法に準用規定のない商法14条(不実登記)が、実体のない「従たる事務所」の登記がなされている場合に類推適用されるか。また、その結果として実体のない営業所の主任者が表見参事(法44条2項・商法42条準用)として認められるか。
規範
1. 中小企業等協同組合法(以下「法」)44条の「従たる事務所」とは、独自に取引を決定・施行しうる組織実体を有するものを指す。2. 表見支配人に関する商法の規定(商法42条等)の準用は、取引の安全保護を目的とする外観理論に基づいている。3. したがって、事務所に実質的な支店実体がない場合であっても、従たる事務所として不実の登記がなされているときは、商法14条の不実登記の規定を類推適用すべきである。4. これにより、組合は善意の第三者に対し、当該事務所の主任者を本来の参事と同様に裁判外の行為を行う権限ある者として取り扱わなければならない。
重要事実
被上告人である中小企業等協同組合は、D営業所を「従たる事務所」として登記していた。しかし、当該営業所には一定の範囲内で独自に取引を決定・施行できるような組織としての実体(支店実質)がなかった。この営業所の所長であったEが本件手形を振り出したため、その有効性と組合の責任が争点となった。
あてはめ
本件において、被上告人のD営業所は従たる事務所として登記されており、Eはその営業所長という名称を付されていた。D営業所には支店としての実質がないものの、不実の登記が存在する以上、外観理論および禁反言の法理に基づき、商法14条が類推適用される。したがって、相手方が悪意である等の特段の事情がない限り、被上告人は本来の意味における支店として取り扱う義務を負い、Eを参事と同一の権限を有する者とみなされるべきである。
結論
被上告人(組合)は、相手方が悪意等の特段の事情がない限り、Eの振り出した本件手形について振出人としての責任を負う。
実務上の射程
商法14条の類推適用を認めた重要な判例である。商法上の商人でなくとも、取引の安全を保護すべき外観が存在し、かつ準用規定が欠落している場合には、商法の登記に関する一般原則を類推適用して解決を図るべきことを示している。答案上は、表見支配人の成立要件において「支店」の実質が欠ける場合の救済論として位置づける。
事件番号: 昭和42(オ)848 / 裁判年月日: 昭和45年3月27日 / 結論: 棄却
手形振出の代理権を有しない信用組合の表見参事が代理資格を冒用して約束手形を振り出した場合において、手形受取人および同人の被裏書人がいずれも右代理権のないことを知つて手形を取得したときには、信用組合は被裏書人である手形所持人に対し、右表見参事が右代理権を有しなかつたことをもつて対抗することができる。