判旨
複数の債権者が各自で債務者に対し全額の支払を請求でき、債務者がいずれかの債権者に弁済すれば他の債権者に対する債務も消滅する「連帯債権」の関係を認めた事例である。
問題の所在(論点)
数人の債権者が、それぞれ独立して債務の全額の支払を求め、かつ、一人の債権者への弁済によって債務全体が消滅するという関係(連帯債権)が認められるか。
規範
債権者が複数存在する場合において、各債権者が独立して債務の全額について履行を請求することができ、かつ、一人の債権者への弁済が他の債権者に対しても効力を生じ、債務者がその二重弁済の義務を免れる合意がある場合、その権利は連帯債権としての性質を有する。
重要事実
被上告人両名は、上告人に対し、金25万円の支払を求めて提訴した。原審の認定によれば、被上告人両名は各自が上告人に対して25万円全額の支払を求め得ること、および、上告人が被上告人両名のいずれかに対して合計25万円を支払い終えれば、本件貸借および立替金弁済に基づく一切の責任を免れるという趣旨の合意がなされていた。
あてはめ
本件では、被上告人両名と上告人との間で、被上告人らが「各自」25万円の支払を求め得るとされており、これは各債権者が独立して全額の履行を請求できることを意味する。また、いずれかへの支払により「一切の責任を免れる」との合意は、弁済の絶対的効力を認めたものと評価できる。したがって、本件合意は連帯債権の成立を認めるに足りる特約であるといえる。
結論
被上告人両名の請求を連帯債権として認容した原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
民法改正(2017年)により連帯債権の規定(432条以下)が新設されたが、本判例はその明文化以前から実務上認められていた連帯債権の構成を確認するものである。答案上は、複数の債権者に全額の請求を認める必要があり、かつ債務者に二重弁済の危険がないことを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)431 / 裁判年月日: 昭和32年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭債務において特段の合意があれば、債務者は分割債務ではなく、債務全額について不可分的に給付すべき義務を負う。契約書の文言に分割債務である旨の記載がなくても、諸般の証拠に基づき全額弁済の約定が認められれば、不可分債務としての責任を負う。 第1 事案の概要:上告人は、相手方に対して金5万円の支払債務…