判旨
当事者が弁論において「合意解除」という法律用語を使用していなくても、本人尋問等の全趣旨からその趣旨の主張が明白であれば、裁判所は合意解除の事実を認定できる。
問題の所在(論点)
当事者が特定の法律用語(「合意解除」等)を明示的に用いていない場合に、裁判所がその事実を認定することは弁論主義に反するか。
規範
弁論主義の下では、主要事実について当事者の主張が必要であるが、必ずしも厳格な法律用語を用いる必要はない。口頭弁論の全趣旨や本人尋問の結果に照らし、実質的にその事実を主張する趣旨が明白であれば、当事者による主張があったものと認めるのが相当である。
重要事実
上告人(原告)は借地権に基づき本訴請求を行った。これに対し被上告人(被告)であるB寺の住職は、第一審の本人尋問において「合意解除」という言葉自体は使用しなかったが、契約を終了させる合意があった旨の供述を行った。第一審はこの供述を含む証拠調べの結果に基づき合意解除による借地権消滅を認め、原審もこの判断を維持した。これに対し上告人は、被告から合意解除の主張がなされていないのにこれを認めるのは違法であると主張して上告した。
あてはめ
被上告人側の住職は、本人尋問の際、合意解除という用語こそ用いていないものの、その趣旨を含む供述を行っている。この本人尋問の結果は、原審において被上告人により援用されている。したがって、原審が口頭弁論の全趣旨に照らし、被上告人から合意解除の事実について主張があったものと判断したことは、弁論主義の趣旨に反するものではなく、適法な事実認定の範囲内といえる。
結論
本件借地権が合意解除により消滅したとした原審の認定は正当であり、主張がない事実を認定したという違法はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(オ)190 / 裁判年月日: 昭和32年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の譲受人が、当該不動産に対する賃借権の存在を知って買い受けた場合であっても、当該賃借権が対抗要件を欠いている以上、新所有者が土地の明渡しを求めることは原則として権利の濫用にあたらない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を有していた。被上告人は、上告人が本件土地を占有し賃借権…
弁論主義における「主張」の程度の緩和(沈黙の主張・間接主張の法理)に関連する。答案上は、当事者の供述から主要事実に合致する具体的態様が語られている場合に、法律用語の欠如を理由に主張を否定すべきではないという文脈で活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)441 / 裁判年月日: 昭和28年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権を承認しないことが、信義誠実の原則に反し、または権利の濫用となると解されるべきでない場合には、当該賃借権の主張は認められない。 第1 事案の概要:本件において、上告人は被上告人に対し賃借権の存在を主張したが、被上告人がこれを承認しなかった。上告人は、被上告人が賃借権を承認しないことが信義則違…
事件番号: 昭和30(オ)109 / 裁判年月日: 昭和32年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の賃貸借契約その他借地権の発生原因となる合意が存在しない場合には、たとえ地上建物の登記があっても、建物保護法(現・借地借家法10条)による対抗力は認められない。 第1 事案の概要:上告組合(被告)は、被上告人(原告)の所有地について借地権を主張していた。しかし、原審において、被上告人と上告組合…
事件番号: 昭和30(オ)714 / 裁判年月日: 昭和31年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文に訴訟告知に関する事実の記載がないことのみを理由とする上告は、原判決に影響を及ぼす法令の違背を主張するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審がその判決文の中に訴訟告知に関する事実を記載していないことを理由として、原判決には違法があると主張し、上告を提起した。 第2 問題の所…