判旨
投票管理者が投票立会人を伴わず自ら投票箱等を送致しなかった等の公職選挙法55条違反があっても、不正行為の介在し得る余地がなく、選挙の結果に異動を及ぼす虞がないと認められる場合には、当該選挙を無効とはできない。
問題の所在(論点)
投票管理者が自ら投票立会人を伴って投票箱等を送致すべきとする公職選挙法55条の規定に違反した場合において、その一事をもって直ちに「選挙の結果に異動を及ぼす虞」(同法205条1項)があるとして選挙が無効となるか。
規範
公職選挙法55条の規定の趣旨は、投票箱が送致される途中で投票管理者の管理を離れた際に、不正な開函や投票の増減等が行われる事態を防止することにある。したがって、同条に違反する形式的な違法があったとしても、直ちに選挙を無効とするものではなく、客観的にみて「選挙の結果に異動を及ぼす虞」がある場合に限り、無効原因(同法205条1項)となると解すべきである。
重要事実
本件選挙において、複数の投票区の投票管理者が、自ら投票立会人を伴って投票箱、投票録、選挙人名簿を開票所に送致せず、投票事務従事者等に委ねて送致させた。一部の投票箱は送致の便宜上、一時的に市役所分室に運び込まれたが、そこには複数の職員や立会人等が在室しており、約1時間半後に管理者代理らの附添いの下で開票所に運ばれた。この間、投票箱の開函等の不正が行われた形跡はなく、その他の投票箱についても異常があったと疑うに足りる事実は認められなかった。
あてはめ
本件では、投票管理者が自ら送致しなかった点において同法55条違反が認められる。しかし、事実関係によれば、投票箱が一時保管された場所には多数の職員や立会人が存在しており、不正な開函等が介在する余地はなかったと認められる。また、その他の送致プロセスにおいても異常は確認されていない。そうであれば、形式的な規定違反はあるものの、投票の正当性が害されたとはいえず、実質的に選挙の結果に影響を及ぼすような具体的な危険性(虞)は生じていないと評価される。
結論
本件の送致手続における違法は、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるものとはいえないため、選挙は無効とはならない。
事件番号: 昭和35(オ)677 / 裁判年月日: 昭和35年9月22日 / 結論: 棄却
代理投票が投票管理者に対する適法な申請なくして行なわれた違法があつても、補助者一名が選挙人に代つて投票用紙に候補者の氏名を記載し他の補助者がこれに立ち会い、選挙人の指示する候補者の氏名を記載したものと認められる以上、右違法によつて選挙を無効とすべきではない。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続規定の違反(形式的違法)が直ちに無効原因となるのではなく、結果への影響可能性(実質的違法)を重視する判断枠組みを示す。特に「送致の適正」に関する違反については、不正の介在可能性の有無を具体的事実から検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和51(行ツ)57 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 破棄自判
一、不在者投票をしようとする選挙人は、不在者投票用紙等の交付を使者によつて請求することも許される。 二、選挙管理委員会が使者による不在者投票用紙等の交付請求を受理するにあたつてなすべき右使者と称する者が真実の使者であるかどうかの確認は、真実の使者であることを疑うに足りる特段の事情のない限り、その使者と称する者の選挙人何…
事件番号: 昭和33(オ)737 / 裁判年月日: 昭和33年10月17日 / 結論: 棄却
補充選挙人名簿登録申請期間経過後の申請を受理して登録をした違法があつても、当該補充選挙人名簿が無効であるとはいえない。
事件番号: 昭和32(オ)461 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】部落(地域組織)による候補者の推薦や選挙運動は直ちに違法ではなく、個別の運動に違法があっても、それが公職選挙法205条1項の「選挙の規定」違反として選挙無効の原因になるものではない。 第1 事案の概要:市議会議員選挙において、各地区(部落)の有志や各種団体幹部が協議し、地域の利益擁護を目的に地域別…