代理投票が投票管理者に対する適法な申請なくして行なわれた違法があつても、補助者一名が選挙人に代つて投票用紙に候補者の氏名を記載し他の補助者がこれに立ち会い、選挙人の指示する候補者の氏名を記載したものと認められる以上、右違法によつて選挙を無効とすべきではない。
代理投票が投票管理者に対する適法な申請がなく行なわれた違法と選挙の効力。
公職選挙法48条,公職選挙法205条1項
判旨
代理投票において、投票管理者への適法な申請を欠く等の事務執行上の瑕疵があっても、選挙人の指示通りに記載されたと認められる限り、直ちに選挙の結果に異動を及ぼす虞があるとはいえない。
問題の所在(論点)
代理投票において、投票管理者に対する適法な申請を欠く等の事務執行上の瑕疵(手続規定違反)がある場合、直ちに公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞」が認められ、選挙が無効となるか。
規範
公職選挙法上の選挙無効事由(205条1項)である「選挙の規定に違反することがあるとき」とは、単に規定違反があるだけでなく、それによって「選挙の結果に異動を及ぼす虞」がある場合を指す。事務執行上の手続的違法があっても、投票の自由公正が実質的に保障され、選挙人の真意が投票に反映されていると認められる場合には、直ちに当該虞があるとは認められない。
重要事実
本件選挙の第三投票所において、午前10時以降に行われた代理投票が、投票管理者に対する適法な申請手続を経ずに行われた。この代理投票では、1名の代理投票補助者が選挙人に代わって候補者名を記載し、別の補助者がこれに立ち会っていた。上告人は、この管理執行の瑕疵を理由に選挙を無効とする裁決を行ったが、原審は、補助者の立ち会い状況から選挙人の指示通りの記載がなされたと推認し、選挙無効を否定した。
あてはめ
本件では、代理投票補助者1名が代筆し、他の補助者が立ち会っていた事実から、投票は選挙人の指示通りになされたと認められる。この場合、手続的な申請を欠くという事務執行上の瑕疵はあるものの、選挙人の真意は正確に投票に反映されており、選挙の自由公正が害されたとはいえない。したがって、当選者と次点者の得票差等の数字的検討を待つまでもなく、客観的に見て選挙の結果に異動を及ぼすような具体的な危険性は認められない。
結論
適法な申請を欠く代理投票であっても、選挙人の指示通りの記載が担保されている限り、直ちに「選挙の結果に異動を及ぼす虞」があるとはいえず、選挙は無効とならない。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続違反が「選挙の結果に異動を及ぼす虞」に直結するかどうかの判断基準を示す。特に代理投票の瑕疵については、手続の形式的成否だけでなく、投票内容が選挙人の真意に合致しているかという実質面から、選挙の自由公正の侵害の有無を判断する。答案上は、205条1項のあてはめにおいて、違反の態様と選挙人の意思反映の程度を相関的に論じる際に活用する。
事件番号: 昭和31(オ)332 / 裁判年月日: 昭和31年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票管理者が投票立会人を伴わず自ら投票箱等を送致しなかった等の公職選挙法55条違反があっても、不正行為の介在し得る余地がなく、選挙の結果に異動を及ぼす虞がないと認められる場合には、当該選挙を無効とはできない。 第1 事案の概要:本件選挙において、複数の投票区の投票管理者が、自ら投票立会人を伴って投…
事件番号: 昭和44(行ツ)2 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
選挙人にあらかじめ配布された入場券が住所不明として返戻された場合において、当該選挙人であるとして入場券を持参しない者が投票に来たときは、投票事務従事者において「その理由をただし」、また、本人であることの確認には生年月日の対照をもつてすることが、選挙事務の取扱いとして至当というべきであるが、これを欠いたからといつて、その…
事件番号: 昭和35(オ)1105 / 裁判年月日: 昭和36年1月20日 / 結論: 棄却
投票所の設備が公職選挙法施行令第三二条に違反していても、選挙人がその自由な意思に従つて投票し選挙の自由公正が害されることがなかつたと認められる場合は、選挙を無効とすべきではない。