選挙人にあらかじめ配布された入場券が住所不明として返戻された場合において、当該選挙人であるとして入場券を持参しない者が投票に来たときは、投票事務従事者において「その理由をただし」、また、本人であることの確認には生年月日の対照をもつてすることが、選挙事務の取扱いとして至当というべきであるが、これを欠いたからといつて、その取扱いがただちに選挙の規定に違反するものということはできない。 (参照) 一審 福岡高裁昭和四三年九月一六日判決(行裁例集一九巻八・九号一四六三頁)
選挙人にあらかじめ配布された入場券が住所不明として返戻された場合に当該選挙人であるとして入場券を持参しない者が投票に来たときの取扱い
公職選挙法43条,公職選挙法施行令35条
判旨
選挙人名簿の不備や投票事務の管理上の過誤があっても、直ちに選挙を無効ならしめる選挙規定違反とは認められない。特に入場券を持たない者の本人確認における事務的な不備は、至当とはいえないとしても、直ちに法令違反を構成するものではない。
問題の所在(論点)
選挙事務の執行において、本人確認等の適切な事務手続が欠落していた場合に、それが公職選挙法上の「選挙の規定に違反」し、選挙無効の原因となるか。
規範
公職選挙法上の選挙無効(同法205条1項)が認められるためには、「選挙の規定に違反すること」及び「選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあること」が必要である。投票事務において至当とされる取り扱い(入場券不持参者への理由聴取や生年月日対照による本人確認等)を欠いたとしても、その事実のみで直ちに当該取り扱いが「選挙の規定に違反する」ものとは断定できない。
重要事実
上告人らは、本件選挙において(1)選挙人名簿の欠陥、(2)投票事務の管理執行における違法、(3)投票用紙と投票者数の不一致等の過誤があったと主張した。特に、住所不明で返戻された入場券の対象者が、入場券を持たずに投票所に来た際、事務従事者が理由の聴取や生年月日の対照による本人確認を十分に行わなかった点について、選挙の規定違反(無効原因)に該当するかが争われた。
事件番号: 昭和35(オ)677 / 裁判年月日: 昭和35年9月22日 / 結論: 棄却
代理投票が投票管理者に対する適法な申請なくして行なわれた違法があつても、補助者一名が選挙人に代つて投票用紙に候補者の氏名を記載し他の補助者がこれに立ち会い、選挙人の指示する候補者の氏名を記載したものと認められる以上、右違法によつて選挙を無効とすべきではない。
あてはめ
最高裁は、入場券不持参者に対して「その理由をただし」、また「生年月日の対照をもって本人確認をする」ことは、選挙事務の取扱いとして「至当」であると認めた。しかし、これらの確認手続を欠いたからといって、その事務執行が直ちに「選挙の規定に違反するもの」とまで評価することはできないとした。また、名簿調製上の瑕疵についても、選管職員による故意・重過失によって看過され選挙の公正を害する等の特段の事情がない限り、無効原因には当たらないとした。
結論
本件における事務上の過誤や確認漏れは、選挙を無効ならしめるべき「選挙の規定違反」には該当しない。したがって、選挙無効の請求は棄却される。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、事務的な不手際や手続上の瑕疵が直ちに「規定違反」とされるわけではないことを示している。実務上は、単なる事務懈怠を超えて、選挙の公正を根本から害するような重大な態様や、組織的な不正を示唆する事情が必要とされることを示唆する。
事件番号: 昭和51(行ツ)57 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 破棄自判
一、不在者投票をしようとする選挙人は、不在者投票用紙等の交付を使者によつて請求することも許される。 二、選挙管理委員会が使者による不在者投票用紙等の交付請求を受理するにあたつてなすべき右使者と称する者が真実の使者であるかどうかの確認は、真実の使者であることを疑うに足りる特段の事情のない限り、その使者と称する者の選挙人何…
事件番号: 昭和43(行ツ)92 / 裁判年月日: 昭和44年7月15日 / 結論: 棄却
いわゆる選挙の人的一部無効が認められるのは、公職選挙法二〇五条一項により選挙の地域的一部無効を生じ、その結果、同条二項以下の規定により選挙の人的一部無効を生ずる場合に限る。
事件番号: 昭和27(オ)952 / 裁判年月日: 昭和28年3月19日 / 結論: 棄却
所論の不在投票用紙及び投票用封筒を交付するに際し選挙人名簿又は抄本と対照しなかつたという事実は原審も認めているけれども、しかし原判決の認定するところによれば、予め選挙人名簿に基き作成した投票所入場券を各地区の事情にもつとも通ずる駐在員をして選挙人名簿の抄本と対照して予め選挙人に交付してあり、不在者投票用紙及び投票用封筒…
事件番号: 昭和35(オ)1467 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」とは主として選挙の管理執行に関する規定を指し、当選人決定の際の被選挙権の有無の判断に誤りがある場合は、選挙無効の訴えの対象にはならない。 第1 事案の概要:本件選挙において、選挙会は訴外Dに被選挙権がないものと判断し、同人を当選人と定めなかった。上告人は、…