一、不在者投票をしようとする選挙人は、不在者投票用紙等の交付を使者によつて請求することも許される。 二、選挙管理委員会が使者による不在者投票用紙等の交付請求を受理するにあたつてなすべき右使者と称する者が真実の使者であるかどうかの確認は、真実の使者であることを疑うに足りる特段の事情のない限り、その使者と称する者の選挙人何某の使者である旨の申立てとその者が本人の不在者投票事由が存することについての宣誓書その他の書面を所持する事実等によつてすれば足りる。 三、選挙管理委員会が不在者投票用紙等をその交付を請求した選挙人に対し郵送交付するにあたり、これを数人分ずつ取りまとめてそのうちの一人あてに一括して送付し、その送付を受けた選挙人からこれを他の選挙人に伝達させることは、違法である。 四、(省略)
一、使者による不在者投票用紙等の交付請求の可否 二、使者による不在者投票用紙等の交付請求の受理にあたつてなすべき使者の確認方法 三、不在者投票用紙等をいわゆる一括送付の方法によつて選挙人に郵送交付することの適否 四、不在者投票手続に使者による不在者投票用紙等の交付請求の受理にあたつて使者の確認を欠いた違法及び不在者投票用紙等を選挙人に郵送交付するにあたつていわゆる一括送付の方法によつた違法があつても選挙を無効とすべきでないとされた事例
公職選挙法205条1項,公職選挙法(昭和49年法律第72号による改正前のもの)49条,公職選挙法施行令(昭和49年政令第394号による改正前のもの)50条1項,公職選挙法施行令(昭和49年政令第394号による改正前のもの)53条1項
判旨
不在者投票手続における使者の確認不足や郵便の一括送付は、公職選挙法関係規定に違反するが、その違法な票数が当選者と次点者の得票差を下回り、かつ不正の事実も認められない場合には、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある(公選法205条1項)とはいえない。
問題の所在(論点)
使者による不在者投票用紙の交付請求手続および郵便による送付手続の違法の有無。ならびに、それらの違法が公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞」に該当し、選挙を無効とする原因になるか。
規範
1. 使者による交付請求の確認:不在者投票用紙の交付請求が使者による場合、真実の使者であることを疑うに足りる特段の事情がない限り、宣誓書等の書面を確認すれば足り、個別に依頼の経緯等を聴取する必要はない。 2. 郵便による送付方法:施行令53条1項1号の「郵便」とは、選挙人各人への個別送付を意味し、他人に一括して送付することは同条に違反する。 3. 選挙無効の判断:選挙規定の違反があっても、不在者投票用紙が本人に交付され、かつ不正が行われていないならば、当該違法は「選挙の結果に異動を及ぼす虞」(法205条1項)を肯定する事情とはならない。
事件番号: 昭和27(オ)952 / 裁判年月日: 昭和28年3月19日 / 結論: 棄却
所論の不在投票用紙及び投票用封筒を交付するに際し選挙人名簿又は抄本と対照しなかつたという事実は原審も認めているけれども、しかし原判決の認定するところによれば、予め選挙人名簿に基き作成した投票所入場券を各地区の事情にもつとも通ずる駐在員をして選挙人名簿の抄本と対照して予め選挙人に交付してあり、不在者投票用紙及び投票用封筒…
重要事実
青森県D市長選挙において、市選挙管理委員会は、1人で400〜500人分の不在者投票用紙を請求した使者に対し、具体的な本人確認を行わず受理した。また、投票用紙を郵送する際、数人分を一括して特定の1名宛てに送付した(計992人分)。そのうち831人が現実に投票し、不正の事実は認められなかった。当選者と次点者の得票差は362票であった。
あてはめ
1. 交付請求:1人で400名以上の請求を行うことは異常であり、真実の使者であることを疑う「特段の事情」があるため、具体的な確認を欠いた受理は違法である。 2. 送付方法:確実に本人へ交付させる趣旨から、一括送付は施行令違反の違法がある。 3. 結果への影響:違法な手続に関わった992票のうち、現実に投票された831票は本人に交付され不正もなかったといえる。疑いの残る票数は差引き161票にとどまり、得票差362票を下回るため、選挙結果を左右する可能性はない。
結論
本件各手続の違法は、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるとはいえないため、本件選挙を無効とすべきではない。
実務上の射程
選挙無効訴訟における、手続違法と205条1項の関係を示す。手続上の形式的違法があっても、それが実質的な「不正投票」や「投票機会の喪失」に繋がらず、かつ不透明な票数が得票差に届かない場合は、選挙の効力を維持する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成8(行ツ)28 / 裁判年月日: 平成8年5月31日 / 結論: その他
一 選挙期日に選挙人が投票区のある市町村の区域外に旅行中であるという事由は、その旅行が儀礼等の理由から社会通念上必要な用務のための旅行であるか、当日以外に日程を変更することが著しく困難であるなどの事情が認められる場合に限り、公職選挙法四九条一項二号所定の「やむを得ない用務」のためのものとして不在者投票事由に該当する。 …
事件番号: 平成1(行ツ)167 / 裁判年月日: 平成2年4月12日 / 結論: 棄却
不在者投票の立会人が、立会いをしつつ併せて不在者投票事務の補助執行に従事していたため、立会人の監視機関としての役割を十分に果たすことができない状態にあったときは、その間にされた不在者投票は、公職選挙法四九条一項同法施行令五六条一項、二項の規定に違反した違法のものというべきである。
事件番号: 昭和44(行ツ)2 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
選挙人にあらかじめ配布された入場券が住所不明として返戻された場合において、当該選挙人であるとして入場券を持参しない者が投票に来たときは、投票事務従事者において「その理由をただし」、また、本人であることの確認には生年月日の対照をもつてすることが、選挙事務の取扱いとして至当というべきであるが、これを欠いたからといつて、その…
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…