一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたとしても、法定の手続を経て確定した名簿は、そのために無効となるものではなく、右名簿によつた選挙を違法とすることはできない。
一 不在者投票手続に要する投票立会人の数 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちに投票管理者に送致しなかつた場合の選挙の効力 三 多数の無資格者の誤載された選挙人名簿によつた選挙の効力
公職選挙法施行令56条,公職選挙法施行令60条,公職選挙法25条,公職選挙法28条,公職選挙法205条
判旨
不在者投票手続において立会人は1名で足りるとし、また、管理規定の一部に違反があっても、それが選挙結果に異動を及ぼすおそれがなく、かつ選挙の公正を著しく害する特段の事情がない限り、選挙は無効にならない。
問題の所在(論点)
不在者投票の立会人数および一部の管理手続上の瑕疵が、公職選挙法205条1項にいう「選挙の結果に異動を及ぼす虞」がある場合に該当し、選挙を無効とする事由になるか。
規範
1. 公職選挙法49条の委任に基づく施行令56条2項の不在者投票立会人は、当該市町村の選挙人名簿登録者であれば1名でも足りる。2. 選挙管理の規定に違反があっても、直ちに選挙全体が無効となるわけではなく、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合に限り、選挙の規定に違反することを理由として選挙を無効とすることができる(公職選挙法205条1項)。具体的に管理の瑕疵が証明されない限り、漫然と違法を推認することは許されない。
重要事実
事件番号: 昭和41(行ツ)47 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる替玉投票またはたらい回し投票が行なわれた事実があるだけでは、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定の違反があるとはいえない。
町議会議員選挙において、不在者投票の管理に関し以下の点が争われた。(1)投票立会人が1名であったこと、(2)不在者投票用封筒等の法定保管期間内の焼却、(3)不在者投票の投票所への送致遅延(正午頃の送致)、(4)投票用紙が透視可能であったとの主張、(5)選挙人名簿に多数の無資格者が登録されていた事実。原審は一部に不適切な点は認めたが、選挙無効を認めなかったため、上告人が憲法・法令違反を理由に上告した。
あてはめ
1. 立会人について、施行令56条2項は特別の定めであり、1名で適法である。2. 封筒等の焼却は施行令45条違反だが、証拠隠滅等の他意は認められず、具体的不正の証明がない以上、全投票の無効は導けない。3. 送致遅延については、投票所閉鎖時刻までに全投票が到達しており、選挙結果に影響を及ぼす余地はない。4. 透視可能性や無資格者の登録についても、管理執行手続そのものの違法や公正を害する事実を基礎付ける証拠に欠ける。したがって、一部の疎漏や規定違反はあっても、選挙の公正が失われたとはいえない。
結論
不在者投票の管理に多少の疎漏や規定違反があっても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがない本件においては、選挙の無効事由には当たらない。上告棄却。
実務上の射程
公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞」の判断において、手続的違反(訓示的規定や管理上のミス)があっても、それが直ちに投票の信用性を失わせ、結果を左右する程度に至らない限り無効とはされないという、実務上の厳格な立証責任の所在を示すものとして活用できる。
事件番号: 昭和49(行ツ)30 / 裁判年月日: 昭和49年11月5日 / 結論: 棄却
一、不在者投票管理者又は不在者投票管理者の不在中ただ一人で不在者投票事務を管理執行していた補助執行者が不在者投票の立会人を兼ねることは、違法である。 二、不在者投票管理者が、投票記載場所を管理するにあたつて、みずから投票記載場所を見透せる位置にいて直接投票を監視していなくても、投票立会人を適当に配置し、その立会いと相ま…
事件番号: 昭和32(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙手続に法令違反がある場合であっても、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないときには、当該選挙は無効とはならない。投票箱の空虚確認漏れ等の手続上の瑕疵は、実質的に公正が担保されていれば選挙無効の原因を構成しない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、複数の手続上の問題が指摘された。具体…
事件番号: 昭和30(オ)540 / 裁判年月日: 昭和30年11月25日 / 結論: 棄却
公職選挙法施行令第三四条に「選挙人」とあるのは、投票所に投票のため来た一般選挙人を指すのであつて、投票立会人のごとき選挙事務の管理に関与する者を含まない。