いわゆる替玉投票またはたらい回し投票が行なわれた事実があるだけでは、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定の違反があるとはいえない。
いわゆる替玉投票またはたらい回し投票と選挙の規定違反
公職選挙法44条,公職選挙法46条,公職選挙法205条
判旨
替玉投票やたらい回し投票等の投票者側の違法行為は、選挙管理機関がこれを看過黙認した等の格別の事情がない限り、直ちに選挙管理執行規定違反(公職選挙法205条1項)を構成しない。
問題の所在(論点)
投票者個人の組織的な不正行為(替玉投票・たらい回し投票)が存在する場合、選挙管理機関がそれを阻止できなかったことをもって、公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定に違反」したといえるか。
規範
いわゆる替玉投票やたらい回し投票は、もともと投票者各個人の違法行為であり、選挙管理機関がこれを発見・阻止できなかったことのみをもって、直ちに選挙の管理執行に関する規定違反と解することはできない。ただし、(1)選挙事務従事者が本人確認手続を怠り、もしくは明白な過誤をおかし、(2)替玉と知りながら制止せず幇助し、または(3)投票用紙の持ち帰り等の不正行使が公然と行われるのを看過黙認したような「格別の事情」がある場合には、管理執行の違法が認められる。
重要事実
町長選挙において、対立候補間の競争が激しく、投票所入場券や投票用紙の不正授受が組織的に行われ、約40票の替玉投票や、投票用紙を他人に渡す「たらい回し投票」が行われた疑いがあった。原審は、これらを防止できなかった投票管理は杜撰であり、作為の疑いすらあるとして公職選挙法205条1項に基づき選挙を無効とした。これに対し、選挙事務従事者が意図的に不正を助長した等の具体的証拠の有無が争点となった。
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…
あてはめ
本件において、40余票の替玉投票や組織的な入場券の不正授受、たらい回し投票の存在が推認されるとしても、これらは本来投票者側の違法行為である。選挙事務従事者が名簿対照を怠ったり、替玉と知りながら幇助したり、あるいは不正が公然と行われるのを黙認したといった特段の事実は認められない。また、入場券の整理番号に不一致がある等の事務上の不備も、直ちに各候補者の得票増減を来すような不正工作を推認させるものではない。したがって、選挙管理機関に格別の事情としての違法管理があったとは断定できない。
結論
単に投票者の不正行為を阻止できなかっただけでは選挙規定違反とはならず、原判決が管理執行の違法を認めて選挙を無効とした判断は、公職選挙法205条1項の解釈を誤ったものである。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、投票者側の不正と管理側の瑕疵を区別する重要な基準となる。答案上は、管理執行の「違法」を論じる際、単なる結果としての不正存在ではなく、管理機関側の作為・不作為(看過・黙認等)の有無を検討する際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和41(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和42年3月23日 / 結論: 棄却
一 弁護士法第二五条第四号違反の訴訟行為であつても、相手方において、これを知りまたは知りうべき事情にありながら事実審の口頭弁論の終結時までに異議を述べなかつたときは、後日にいたりその無効を主張することを許されないものと解すべきである。 二 候補者の氏名の記載以外に人の氏名と判読できる無色の記載が存する投票であつても、そ…
事件番号: 昭和37(オ)697 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 証明書を提出することができない理由記載欄に「証明者なし」と記載した選挙人自身が作成した疎明書と題する書面を提出しただけでは、公職選挙法施行令第五二条第三項の疎明があつたとはいえない。 二 不在者の投票用封筒の表面および裏面またはそのいずれかに公職選挙法施行令第五六条第六〇条所定事項の記載のない投票は、受理すべきでな…
事件番号: 昭和41(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
一 候補者の父の名に合致する記載のある投票でも、右父の名は代々襲名されたもので、現に候補者の家の家号として取り扱われ、候補者自身の通称とも認められるときは、これを右候補者に宛てられた有効投票と解すべきである。 二 赤のマヂツクインキで候補者の氏名を記載した投票は無効でない。
事件番号: 昭和42(行ツ)43 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
選挙人名簿調製機関が選挙人の補充選挙人名簿の登録申請を妨げた違法は、名簿の脱漏として、法定の選挙人名簿修正争訟によつて争うべきであり、選挙の無効の理由となるものではない。