選挙人名簿調製機関が選挙人の補充選挙人名簿の登録申請を妨げた違法は、名簿の脱漏として、法定の選挙人名簿修正争訟によつて争うべきであり、選挙の無効の理由となるものではない。
選挙人名簿調製機関が補充選挙人名簿の登録申請を妨げた違法と選挙の効力
公職選挙法(昭和41年法律77号による改正前のもの。)26条,公職選挙法(昭和41年法律77号による改正前のもの。)29条,公職選挙法(昭和41年法律77号による改正前のもの。)23条,公職選挙法(昭和41年法律77号による改正前のもの。)24条,公職選挙法(昭和41年法律77号による改正前のもの。)205条
判旨
補充選挙人名簿の調製は選挙管理執行の手続とは別個のものであり、名簿に脱漏があっても法定の名簿修正争訟の手続によらなければ争えない。調製機関の妨害により登録がなされなかった場合も名簿の「脱漏」に含まれ、名簿修正争訟の問題にとどまり選挙無効の原因とはならない。
問題の所在(論点)
補充選挙人名簿の調製過程における不当な登録妨害(名簿登録の機会の剥奪)が、公職選挙法上の「脱漏」にあたるか。また、その瑕疵が名簿修正争訟の対象にとどまるのか、あるいは選挙全体の無効原因(公職選挙法204条等)となり得るか。
規範
選挙人名簿は、脱漏や誤載があったとしても法定手続を経て確定した以上は有効な名簿であり、その瑕疵については法が設けた名簿修正争訟の手続(異議申出等)によってのみ争うことができる。補充名簿における「脱漏」とは、単に登録申出があったが登録されなかった場合だけでなく、登録機関の妨害により登録申出の機会を失わしめられた場合も含まれる。したがって、名簿調製上の瑕疵は選挙管理執行の手続とは別個のものであり、特段の事情がない限り、選挙自体の無効原因とはならない。
重要事実
上告人は、補充選挙人名簿の調製機関が、特定の登録資格者2名に対して名簿登録を申し出る機会を故意に失わせるという登録妨害を行ったと主張した。このため、名簿に登録されなかった「脱漏」があることを理由として、当該選挙の無効を求めて提訴した事案である。原審は、登録妨害の事実を認める証拠がないとしつつ、仮に事実であっても名簿修正争訟の問題であり選挙無効原因ではないと判断した。
事件番号: 昭和52(行ツ)94 / 裁判年月日: 昭和53年7月10日 / 結論: 破棄差戻
町選挙管理委員会が公職選挙法二二条二項の規定に基づく選挙人名簿の登録の際に調査の疎漏により被登録資格の確認を得られない者を登録した瑕疵は、同法二〇五条一項所定の選挙無効の原因である選挙の規定に違反するものにあたらない。
あてはめ
補充名簿の調製は選挙管理執行とは別個の手続であり、基本名簿を補充する趣旨である。本件で主張される登録妨害による不登録は、公職選挙法旧23条・29条の「脱漏」に該当すると解される。法が名簿修正争訟という限定的な救済手段を設けている以上、不登録を争うにはこの手続によるべきである。したがって、名簿の瑕疵は確定した名簿の効力を直ちに失わせるものではなく、選挙の管理執行手続そのものの違法として選挙を無効にする理由にはならない。
結論
補充選挙人名簿の登録妨害は、名簿修正争訟における「脱漏」の問題であり、それが当然に補充名簿の無効や、ひいては選挙自体の無効原因となることはない。
実務上の射程
選挙人名簿の確定力(公定力)と、名簿修正手続の排他性を確認した判例である。名簿調製と選挙執行の二段階構造を前提に、名簿の瑕疵は原則として選挙無効訴訟で主張できないとする規範として機能する。答案上は、選挙無効の訴えにおける「選挙の規定に違反」(公選法205条1項)の該当性を否定する文脈で使用する。
事件番号: 昭和41(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
一 候補者の父の名に合致する記載のある投票でも、右父の名は代々襲名されたもので、現に候補者の家の家号として取り扱われ、候補者自身の通称とも認められるときは、これを右候補者に宛てられた有効投票と解すべきである。 二 赤のマヂツクインキで候補者の氏名を記載した投票は無効でない。
事件番号: 昭和33(オ)405 / 裁判年月日: 昭和33年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】補充選挙人名簿の調製手続に重大な違法があり同名簿が無効となる場合、たとえ基本選挙人名簿が有効であっても、その選挙区における選挙は全部無効となる。また、この違法は選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものとして、公職選挙法205条1項に基づき選挙無効の原因となる。 第1 事案の概要:町議会議員選挙にお…
事件番号: 昭和41(行ツ)47 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる替玉投票またはたらい回し投票が行なわれた事実があるだけでは、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定の違反があるとはいえない。
事件番号: 昭和41(行ツ)61 / 裁判年月日: 昭和42年3月23日 / 結論: 棄却
一 弁護士法第二五条第四号違反の訴訟行為であつても、相手方において、これを知りまたは知りうべき事情にありながら事実審の口頭弁論の終結時までに異議を述べなかつたときは、後日にいたりその無効を主張することを許されないものと解すべきである。 二 候補者の氏名の記載以外に人の氏名と判読できる無色の記載が存する投票であつても、そ…