一 弁護士法第二五条第四号違反の訴訟行為であつても、相手方において、これを知りまたは知りうべき事情にありながら事実審の口頭弁論の終結時までに異議を述べなかつたときは、後日にいたりその無効を主張することを許されないものと解すべきである。 二 候補者の氏名の記載以外に人の氏名と判読できる無色の記載が存する投票であつても、それが不在者投票を許された者または不在者投票の立会人が不在者投票用封筒の表面または裏面に署名した際に封筒内の投票用紙についた記載の跡と推測できるものであるときは、右投票を無効と解すべきではない。
一 弁護士法第二五条第四号違反の訴訟行為の効力 二 候補者の氏名の記載以外に人の氏名と判読できる無色の記載の跡のある投票が有効と認められた事例
弁護士法25条,公職選挙法68条
判旨
弁護士法25条4号違反の訴訟行為は、相手方が異議を述べずに手続を進行させた場合は、後日にその無効を主張できない。また、不在者投票の際に無意識に生じた他事記載の跡は、投票意思の自由を害さず、他事記載による無効原因には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 弁護士法25条4号に違反してなされた訴訟行為の効力および、異議なき進行による治癒の成否。 2. 投票用紙に無意識に生じた氏名の圧痕等の記載が、公職選挙法上の他事記載による無効原因に該当するか。
規範
1. 弁護士法25条4号違反の効力:同条の趣旨は当事者の利益保護にあり、違反行為は絶対無効ではない。相手方が違反を知り得たにもかかわらず、異議なく事実審の口頭弁論を終結させたときは、訴訟法上完全に効力を生じる。 2. 他事記載による投票の効力:公職選挙法が他事記載を無効とする趣旨は、投票者の特定を防ぎ秘密投票制を維持することにある。投票者が無意識に生じさせた記載(圧痕等)は、投票意思の自由を制約せず、秘密保持を害する蓋然性も低いため、直ちに無効とはならない。
重要事実
事件番号: 昭和41(行ツ)47 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる替玉投票またはたらい回し投票が行なわれた事実があるだけでは、公職選挙法第二〇五条第一項にいう選挙の規定の違反があるとはいえない。
町長選挙の当選無効等を争う訴訟において、被上告人の代理人弁護士が選挙管理委員会委員として当該裁決に関与していたことが、弁護士法25条4号(職務を行い得ない事件)に抵触するかが争われた。また、不在者投票において封筒の上から署名した際に、投票用紙に氏名の跡(圧痕)が残った投票が、他事記載として無効になるかが争われた。
あてはめ
1. 弁護士法違反について、上告人らは代理人が選管委員であったことを知り得たはずであるが、原審において異議を述べずに手続を進行させた。したがって、当該訴訟行為の無効を後に主張することは許されない。 2. 他事記載について、本件の記載跡は不在者投票の署名時に無意識に生じたものであり、投票者の意思決定に制約はない。秘密投票の趣旨は投票意思の自由の確保にあり、無意識の記載までを抑制して投票を無効とする必要はない。
結論
1. 弁護士法違反を理由とする無効主張は認められない。 2. 圧痕等の生じた投票は有効であり、選挙の結果に異動を及ぼす虞はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
弁護士法違反の訴訟行為の効力については、当事者の利益保護という趣旨から相対的無効(追認・異議放棄の対象)であることを示しており、訴訟手続の安定を重視する実務上の指針となる。また、投票の効力については、形式的な他事記載の有無だけでなく、投票意思の自由と秘密投票の趣旨に照らした実質的な判断枠組みを提示している。
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…
事件番号: 昭和41(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
一 候補者の父の名に合致する記載のある投票でも、右父の名は代々襲名されたもので、現に候補者の家の家号として取り扱われ、候補者自身の通称とも認められるときは、これを右候補者に宛てられた有効投票と解すべきである。 二 赤のマヂツクインキで候補者の氏名を記載した投票は無効でない。
事件番号: 昭和42(行ツ)43 / 裁判年月日: 昭和42年9月28日 / 結論: 棄却
選挙人名簿調製機関が選挙人の補充選挙人名簿の登録申請を妨げた違法は、名簿の脱漏として、法定の選挙人名簿修正争訟によつて争うべきであり、選挙の無効の理由となるものではない。