一 証明書を提出することができない理由記載欄に「証明者なし」と記載した選挙人自身が作成した疎明書と題する書面を提出しただけでは、公職選挙法施行令第五二条第三項の疎明があつたとはいえない。 二 不在者の投票用封筒の表面および裏面またはそのいずれかに公職選挙法施行令第五六条第六〇条所定事項の記載のない投票は、受理すべきでない。 三 開票に際し、投票数が投票人員より二三票多く、異議決定に際しての各候補者の得票数が開票の際の得票数に比し著しい増減があつた場合、その他の規定違反(原判決参照)とあわせ考えれば、右の事実も選挙無効の一事由とすることができる。
一 不在者投票のための疎明がなかつたと認められた事例 二 不在者投票用封筒の表面および裏面に公職選挙法施行令第五六条第六〇条所定の事項の記載のない投票の受理の可否 三 投票人数と投票数の不一致、開票の際と異議決定の際における投票数の増減を選挙無効の一事由とした事例。
公職選挙法施行令52条,公職選挙法施行令56条,公職選挙法施行令60条,公職選挙法施行令63条,公職選挙法205条1項
判旨
不在者投票規定の違反や開票事務の著しい厳正欠如が重なり、選挙の自由公正を阻害したと認められる場合には、違法な投票数が限定的であっても選挙全体が無効となる。不在者投票制度の厳格な運用は不正防止に不可欠であり、その手続違背は選挙無効の原因となり得る。
問題の所在(論点)
不在者投票の手続違反や開票事務の不手際が、公職選挙法上の「選挙の規定に違反することがあるとき」に該当し、かつ「選挙の結果に異動を及ぼす虞」があるとして、選挙全体を無効とすべきか。
規範
不在者投票は例外的な制度であり、不正に利用される恐れがあるため、法令の手続規定は厳格に解釈・運用されなければならない。選挙事務の処理が著しく厳正を欠き、選挙の結果について選挙人が多大の疑惑の念を抱くに至るような状況がある場合には、個別の違法投票数が限定できる場合であっても、選挙の手続全般の適正を欠くものとして、公職選挙法205条1項に基づき選挙全部が無効となる。
事件番号: 昭和33(オ)405 / 裁判年月日: 昭和33年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】補充選挙人名簿の調製手続に重大な違法があり同名簿が無効となる場合、たとえ基本選挙人名簿が有効であっても、その選挙区における選挙は全部無効となる。また、この違法は選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものとして、公職選挙法205条1項に基づき選挙無効の原因となる。 第1 事案の概要:町議会議員選挙にお…
重要事実
秋田県天王町選挙において、(1)「証明者なし」と記載された疎明書や、住所・事由の記載がない証明書に基づき不在者投票用紙が交付され、かつ封筒の記載を欠く投票が受理される等の事務手続違反があった。(2)開票に際し、投票数が投票者数より23票多く、点検により得票数が大幅に増減(当選者について31票減等)した。(3)投票箱から118枚もの不成規の紙片が発見された。これら一連の事由に基づき、県選挙管理委員会が選挙無効の裁決をしたところ、その当否が争われた。
あてはめ
まず、不在者投票につき、証明書の欠如や不備があるまま用紙を交付・受理した点は、不正防止のための厳密な規定に違反し違法である。次に、開票事務において投票者数と投票数が一致せず、再点検で数十票単位の増減が生じた事実は、事務処理が著しく厳正を欠いたことを示す。これに大量の不成規紙片の混入を併せれば、選挙事務全般が適正を欠き、組織的な不正の疑念を抱かせる一環として現れている。したがって、仮に違法な不在者投票が30票に過ぎず、数としては限定的であったとしても、選挙全般の自由公正が阻害されたものと認められる。
結論
本件選挙は無効である。選挙事務の著しい不適正により選挙の自由公正が阻害された以上、個別の違法投票数の多少にかかわらず、選挙全体が無効とされるべきである。
実務上の射程
選挙無効の訴訟において、個別の得票数への影響(算術的な異動)が不明確な場合であっても、事務処理の著しい粗漏や不正の介在が、選挙の公正さに対する社会的信頼を損なう程度に至っている場合には、選挙全体を無効にできるとする「一般無効」の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)817 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: 棄却
不在者投票の受理不受理を投票管理者が決定しないため投票が不法に効力を失わしめられた場合においては、その数と当選者の得票数と最高位落選者の得票数との差を比較して、当該当選者の当選の効力を決すべきである。
事件番号: 昭和45(行ツ)56 / 裁判年月日: 昭和46年4月15日 / 結論: 破棄自判
不在者投票を投票所の閉鎖時刻までに投票管理者に送致せず、違法にその効力を失わしめたことは、選挙無効の原因となりうる。
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…
事件番号: 昭和31(オ)687 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙会における決定の効力は、開票の際に存在した事実上の投票状況を基礎として判断されるべきであり、事実認定に疑義がある場合には、証拠により確定された事実に従う。 第1 事案の概要:本件では、選挙会における決定の効力が争われた。具体的には、係争の投票4票が開票の際に存在したか否かが争点となり、上告人は…