不在者投票の受理不受理を投票管理者が決定しないため投票が不法に効力を失わしめられた場合においては、その数と当選者の得票数と最高位落選者の得票数との差を比較して、当該当選者の当選の効力を決すべきである。
不在者投票の管理の違法のためその投票が不法に効力を失わしめられた場合の当選者の当選効力
公職選挙法206条,公職選挙法207条,公職選挙法208条
判旨
不在者投票の送致手続等の違背により不当に投票が失効した場合、公職選挙法209条の2を準用するのではなく、当該失効した投票数と、下位当選者と最高位落選者の得票差を比較して、選挙の結果に影響を及ぼすおそれがあるかを判断すべきである。
問題の所在(論点)
不在者投票の手続違背により投票が不当に失効した場合において、公職選挙法205条1項の「選挙の結果に異動を生ずるおそれ」の有無を判断するために、同法209条の2(潜在的無効投票の計算規定)を準用すべきか、あるいは失効した投票総数と得票差を比較すべきか。
規範
不在者投票が手続上の過誤により不当に効力を失わしめられた場合、公職選挙法209条の2(潜在的無効投票に関する計算規定)を準用すべきではない。この場合、不当に失効した投票の総数と、下位当選者の得票数と最高位落選者の得票数との差を直接比較し、前者が後者を上回るか否かによって、当選の効力に影響を及ぼす(同法205条1項)かどうかを決すべきである。
重要事実
青森県議会議員選挙において、27票の不在者投票を開票管理者に送致する手続に過誤があった。投票管理者がこれについて受理・不受理の決定をしなかった等の手続上の違背により、当該27票が不法に投票の効力を失わしめられた。上告人は、このような場合には公職選挙法209条の2の規定する計算方法に準じて各候補者の得票数を計算すべきであると主張して、選挙の無効を争った。
事件番号: 昭和32(オ)193 / 裁判年月日: 昭和32年5月24日 / 結論: 棄却
県議会議員選挙で「小畑」、「オバタ」、「おばた」と記載されている投票は、同時に行われた知事選挙の候補者中に小畑Dがある場合には、議員候補者小幡谷Cに対する有効投票とは認められない。
あてはめ
公職選挙法209条の2は、既に投じられた投票の中に「無効とすべき投票」が混入している潜在的無効投票の場合を想定した規定である。本件のように、本来有効であるべき投票が手続上の過誤によって「算入されなかった」場合には、同条を準用する前提を欠く。したがって、不当に失効した不在者投票数(27票)を、そのまま下位当選者と最高位落選者の得票差と比較して、当選の効力への影響を判断するのが合理的である。本件では、この比較によって影響の有無が決せられることになる。
結論
本件のような場合には公職選挙法209条の2を準用すべきではなく、不法に失効した投票数と得票差を比較して当選の効力への影響を判断すべきである。上告を棄却する。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続違背が「選挙の結果に異動を生ずるおそれ」(205条1項)があるかどうかの判断枠組みを示す。不在者投票の不受理等の「排除型」の違法については、209条の2の按分計算(算入型の違法に対応)を用いず、単純な数比較(失効数vs得票差)によるという実務上の峻別を明らかにした。答案では、違法の態様が「無効票の混入」か「有効票の不当排除」かを見極めて、後者の場合に本判例の枠組みを用いるべきである。
事件番号: 昭和31(オ)260 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
候補者にB和夫とD一男とがある場合に「B一男」と記載された投票は、B和夫に対する有効投票と解するを相当とする。
事件番号: 昭和37(オ)697 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 証明書を提出することができない理由記載欄に「証明者なし」と記載した選挙人自身が作成した疎明書と題する書面を提出しただけでは、公職選挙法施行令第五二条第三項の疎明があつたとはいえない。 二 不在者の投票用封筒の表面および裏面またはそのいずれかに公職選挙法施行令第五六条第六〇条所定事項の記載のない投票は、受理すべきでな…
事件番号: 昭和31(オ)1037 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
一 同一選挙区内にDなる人物が実在し、同人はその地方で小学校教員、わら工品等の販売業をした後新聞販売業に転じ、町議会議員に当選し、また衆議院議員の選挙運動にも関係し、相当名が知られている場合は、「D」と記載された投票は候補者Eに対する有効投票とは認められない。 二 候補者Eの家の当主は代々「F」を名のり、現に候補者の実…
事件番号: 昭和27(オ)692 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】帰属不明の無効投票が混入している場合、改正公職選挙法に基づき、各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分して差し引いた上で当選の効力を判断すべきである。 第1 事案の概要:昭和26年4月に実施された青森県北津軽郡D議会議員一般選挙において、投票中に25票の「潜在的無効投票(帰…