一 同一選挙区内にDなる人物が実在し、同人はその地方で小学校教員、わら工品等の販売業をした後新聞販売業に転じ、町議会議員に当選し、また衆議院議員の選挙運動にも関係し、相当名が知られている場合は、「D」と記載された投票は候補者Eに対する有効投票とは認められない。 二 候補者Eの家の当主は代々「F」を名のり、現に候補者の実父の名はFであつて、右Fが、かつて町会議員であり、近くは町長を勤め、現に町長選挙に立候補している場合は、「G」がH家の家号と認められても「G」と記載された投票は候補者の父に対する投票と認めるべく、Eに対する有効投票と認めることはできない。
一 候補者氏名と類似する氏名を記載した投票を記載氏名と同一氏名の実在人物があるために無効とした例 二 候補者の実父に対する投票として無効とした例
公職選挙法68条1項本文2号
判旨
選挙において、候補者以外の実在する人物やその通称が記載された投票は、当該人物が選挙区内で相当の知名度を有し、投票者が候補者以外の者を指称する意図で記載したと認められる場合には、無効投票となる。
問題の所在(論点)
公職選挙法における投票の有効性に関し、候補者以外の実在する第三者の氏名や通称が記載された投票を、当該候補者への有効投票と解することができるか。特に、第三者が地域社会で著名である場合の判断基準が問題となる。
規範
投票の効力は、記載された氏名や名称がどの候補者を指すものであるかを、社会通念に照らして客観的に判断すべきである。候補者以外の実在する人物の氏名や、当該人物を指称する通称が記載されている場合、その人物が地域社会において著名であり、かつ、その通称が候補者ではなく当該人物を指すものとして定着しているときは、候補者への有効投票とは認められない。
重要事実
上告人は、候補者Eへの投票として、(1)「D」と記載された投票、および(2)「G」と記載された投票の有効性を主張した。事実関係として、Dは選挙区内で元町議会議員や新聞販売業を営む著名な人物であった。また、Gは候補者Eの実父であり、現職の町長候補であったFの家号・通称であり、候補者Eや他の家族を指すために用いられた事実はなかった。
事件番号: 昭和31(オ)260 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
候補者にB和夫とD一男とがある場合に「B一男」と記載された投票は、B和夫に対する有効投票と解するを相当とする。
あてはめ
Dと記載された投票については、Dが小学校教員や町議会議員、新聞販売業等を通じて選挙区内で相当の知名度を有していたことから、候補者Eではなく実在の第三者Dへの投票と認めるのが相当である。また、Gと記載された投票については、Gは候補者Eの実父であるFの家号・通称として一般に使用されており、F自身が町長や町長候補として広く活躍している実態に照らせば、当主Fへの投票と解すべきである。したがって、いずれも候補者Eへの有効投票とはいえない。
結論
本件各投票を無効とした原審の判断は妥当であり、候補者Eに対する有効投票とは認められない。上告棄却。
実務上の射程
「何人をも指称し難い記載(公選法68条1項5号)」や「候補者以外の者の氏名を記載したもの(同項4号)」の該非判断において、同姓同名の第三者や著名な親族の存在が認定される場合、客観的に特定の第三者を指すと評価される可能性を示す射程を持つ。
事件番号: 昭和35(オ)500 / 裁判年月日: 昭和35年9月13日 / 結論: 棄却
県議会議員選挙と前後して行なわれた市議会議員選挙の候補者にC寛一がある場合に、県議会議員選挙におけるC寛一を意味する投票は候補者C寛二に対する有効投票とは認められない。
事件番号: 昭和32(オ)193 / 裁判年月日: 昭和32年5月24日 / 結論: 棄却
県議会議員選挙で「小畑」、「オバタ」、「おばた」と記載されている投票は、同時に行われた知事選挙の候補者中に小畑Dがある場合には、議員候補者小幡谷Cに対する有効投票とは認められない。
事件番号: 昭和32(オ)467 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】候補者の氏名に類似する実在の他人の氏名が記載された投票であっても、諸般の事実を総合して当該候補者への投票の意思が認められる場合には、当該候補者の有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:選挙において「B一郎」と記載された投票が52票あった。本件選挙には「B永一郎」という候補者が存在したが、一方…
事件番号: 昭和31(オ)817 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: 棄却
不在者投票の受理不受理を投票管理者が決定しないため投票が不法に効力を失わしめられた場合においては、その数と当選者の得票数と最高位落選者の得票数との差を比較して、当該当選者の当選の効力を決すべきである。