県議会議員選挙と前後して行なわれた市議会議員選挙の候補者にC寛一がある場合に、県議会議員選挙におけるC寛一を意味する投票は候補者C寛二に対する有効投票とは認められない。
「C寛一」と記載された投票が候補者C寛二に対する投票と認められなかつた事例。
判旨
公職選挙法上の有効投票と認められるためには、投票した選挙人の意思が明白であることを要し、特定の候補者とその兄のいずれを指すか判定し得ない記載は、有効投票とはならない。
問題の所在(論点)
候補者の氏名ではなく、その兄の氏名が記載された投票について、公職選挙法67条後段の「選挙人の意思が明白」なものとして、当該候補者への有効投票と認められるか。
規範
公職選挙法67条が規定する「その投票した選挙人の意思が明白である」場合に当たるか否かは、客観的な記載内容に基づき、合理的に判断されるべきである。特定の候補者の氏名と、その血縁者等の他人の氏名が混同され、客観的にいずれの者を指すのか判定し得ない場合には、選挙人の意思が明白であるとはいえず、当該候補者への有効投票として算入することはできない。
重要事実
D議会議員選挙において、候補者C寛二の得票とされた中に、同人の兄である「C寛一」と記載された投票が94票含まれていた。C寛二側は、これらはC寛二に投票する意思で氏名を誤記したものであると主張したが、他方でこれらの投票の中には実在する兄(C寛一)に投票する意思で記載されたものが相当数含まれている可能性も否定できなかった。原審はこの94票について、いずれの者を指すか判定し得ないとして無効と判断したため、上告人が争った。
あてはめ
本件における「C寛一」との記載は、候補者C寛二の兄の氏名と合致するものである。事実関係によれば、当該94票の中にはC寛二への誤記も含まれ得るものの、同時に実在する兄C寛一への投票意思による記載も相当数含まれていると推認される。このように、客観的な記載から「C寛一」への投票か「C寛二」への投票かを特定・判別できない状況下では、選挙人の意思が特定の一人に向けられたものとして明白であるとは断定できない。したがって、これらを一律に候補者C寛二への有効投票と扱うことは、公職選挙法67条の趣旨に反すると解される。
事件番号: 昭和31(オ)1037 / 裁判年月日: 昭和32年3月5日 / 結論: 棄却
一 同一選挙区内にDなる人物が実在し、同人はその地方で小学校教員、わら工品等の販売業をした後新聞販売業に転じ、町議会議員に当選し、また衆議院議員の選挙運動にも関係し、相当名が知られている場合は、「D」と記載された投票は候補者Eに対する有効投票とは認められない。 二 候補者Eの家の当主は代々「F」を名のり、現に候補者の実…
結論
本件の「C寛一」と記載された投票は、候補者C寛二に対する有効投票とは認められない。上告棄却。
実務上の射程
候補者の氏名と他人の氏名が酷似・混同される場合の有効投票の判定基準を示す。特に血縁者等の実在する他人の氏名が記載された場合、単なる誤記として救済されるためには、他者への投票可能性を排除できる程度の「意思の明白性」が必要となる。
事件番号: 昭和53(行ツ)50 / 裁判年月日: 昭和53年6月23日 / 結論: 棄却
「小四」と記載された投票は、候補者Cに対する有効投票とは認められない。
事件番号: 昭和35(オ)493 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、候補者の氏名を正確に記載していない投票であっても、その記載内容から特定の候補者を指すと客観的に認められる場合には、当該候補者に対する有効投票として認められる。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、被上告人(候補者)に対するものと考えられる投票の中に、「D…
事件番号: 昭和31(オ)260 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
候補者にB和夫とD一男とがある場合に「B一男」と記載された投票は、B和夫に対する有効投票と解するを相当とする。
事件番号: 昭和32(オ)193 / 裁判年月日: 昭和32年5月24日 / 結論: 棄却
県議会議員選挙で「小畑」、「オバタ」、「おばた」と記載されている投票は、同時に行われた知事選挙の候補者中に小畑Dがある場合には、議員候補者小幡谷Cに対する有効投票とは認められない。