一、不在者投票管理者又は不在者投票管理者の不在中ただ一人で不在者投票事務を管理執行していた補助執行者が不在者投票の立会人を兼ねることは、違法である。 二、不在者投票管理者が、投票記載場所を管理するにあたつて、みずから投票記載場所を見透せる位置にいて直接投票を監視していなくても、投票立会人を適当に配置し、その立会いと相まつて選挙が自由かつ公正に行われるよう監視した場合には、公職選挙法(昭和四九年法律第七二号による改正前のもの)四九条にいう投票記載場所の「管理」が適法にされたものということができる。 三、公職選挙法(昭和四九年法律第七二号による改正前のもの)四九条にいう不在者投票管理者による投票記載場所の「管理」とは、不在者投票管理者の管理権が投票記載場所に対し社会通念上時間的、場所的に及んでいることをいう。
一、不在者投票管理者又は実質上の不在者投票管理者たる補助執行者が不在者投票の立会人を兼ねることの適否 二、公職選挙法(昭和四九年法律第七二号による改正前のもの)四九条にいう「管理」が適法にされたと認められる場合 三、公職選挙法(昭和四九年法律第七二号による改正前のもの)四九条にいう「管理」の意義
公職選挙法(昭和49年法律第72号による改正前のもの)49条,公職選挙法施行令56条1項,公職選挙法施行令56条2項
判旨
不在者投票において、執行機関である管理者(又は実質的な管理者たる補助執行者)が、監視機関である立会人を兼ねることは、選挙の自由と公正を確保する法の趣旨に反し、公職選挙法49条等に違反する。
問題の所在(論点)
不在者投票において、管理者の補助執行者が立会人を兼ねることは公職選挙法49条および同法施行令56条1項、2項に違反するか。また、その違反が選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるといえるか。
規範
1.不在者投票管理者は投票事務の執行機関であり、立会人はその執行を監視する監視機関である。両者は性格の異なる機関として不在者投票に必須とされており、同一人が両者の地位を兼ねることは法律上許されない。2.管理者が不在で、一人の補助執行者が事務を管理執行している場合、当該補助執行者は実質上の管理者にあたるため、立会人を兼ねることはできない。これに違反した投票は、実質的に立会人を欠くものとして無効となる。
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…
重要事実
永平寺町役場での不在者投票において、不在者投票管理者Eが不在の間、選挙管理委員会事務局長Dが、Eの命を受けて一人で管理事務の補助執行にあたった。その際、Dは同時に不在者投票の立会いも行っていた。この「兼務」状態で投じられた不在者投票(15票ないし35票)の効力が争われた。なお、当選者Fと次点者Gの得票差は111票であった。
あてはめ
Dは管理者の不在中に一人で事務を執行しており、「実質上の不在者投票管理者」にあたる。このDが監視機関である立会人を兼ねることは、執行と監視の分離を図る法の趣旨に反し、違法である。したがって、この間に投じられた票は無効となる。しかし、無効となる票数は最大でも35票であり、当選者と次点者の得票差111票を逆転させるには至らない。そのため、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるとは認められない。
結論
不在者投票管理者の補助執行者が立会人を兼ねることは違法であるが、本件では無効票数が得票差を下回るため、選挙の結果に異動を及ぼすおそれ(公選法205条1項)がなく、選挙は無効とならない。
実務上の射程
選挙無効訴訟における「管理規定違反」と「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」の判断枠組みを示す。特に執行機関と監視機関の兼務禁止を明示した点に意義がある。答案では、手続的違法を認めた上で、205条1項の「おそれ」の検討で票数を比較する際の論法として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)750 / 裁判年月日: 昭和32年11月7日 / 結論: 棄却
一 投票立会人が代理投票を補助し立会人が法定数を欠いても、一般の投票立会人としての監視に差支えを生じなかつた場合は選挙を無効とすべきではない。 二 町選挙管理委員会委員長が町長職務執行者代理者の承認を得て町職員に選挙事務を依頼した場合に、右職員の不在者投票事由証明書は町長職務執行代理者が作成しても違法ではない。
事件番号: 昭和52(行ツ)70 / 裁判年月日: 昭和52年11月8日 / 結論: 破棄差戻
裁判所が選挙管理委員会の委員長のした不在者投票事由の存否の認定の当否を判断するにあたつては、選挙人の提出した宣誓書等の書面の記載のほか、選挙人の不在者投票事由に関する口頭説明の内容をもあわせ考慮することを要し、口頭説明の内容が宣誓書等の書面の記載の程度を出ないものであるなど口頭説明の内容を考慮しないことを相当とするよう…
事件番号: 昭和32(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙手続に法令違反がある場合であっても、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないときには、当該選挙は無効とはならない。投票箱の空虚確認漏れ等の手続上の瑕疵は、実質的に公正が担保されていれば選挙無効の原因を構成しない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、複数の手続上の問題が指摘された。具体…
事件番号: 昭和30(オ)540 / 裁判年月日: 昭和30年11月25日 / 結論: 棄却
公職選挙法施行令第三四条に「選挙人」とあるのは、投票所に投票のため来た一般選挙人を指すのであつて、投票立会人のごとき選挙事務の管理に関与する者を含まない。