公職選挙法施行令第三四条に「選挙人」とあるのは、投票所に投票のため来た一般選挙人を指すのであつて、投票立会人のごとき選挙事務の管理に関与する者を含まない。
公職選挙法施行令第三四条にいう「選挙人」の意義
公職選挙法施行令34条
判旨
公職選挙法施行令34条にいう「選挙人」には投票立会人は含まれず、一般の選挙人に投票箱の点検をさせなかったことは選挙規定違反にあたる。しかし、投票立会人が点検し投票箱が空虚であったことが認められる以上、当該違反は選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものとはいえない。
問題の所在(論点)
公職選挙法施行令34条に基づく投票箱の点検を行うべき「選挙人」に、投票立会人が含まれるか。また、一般の選挙人ではなく投票立会人が点検を行ったという手続上の瑕疵が、選挙の無効原因となるか。
規範
公職選挙法施行令34条が投票開始前に「選挙人」に投票箱を点検させるべき旨を定めた趣旨に鑑みれば、同条の「選挙人」とは、投票のために来場した一般の選挙人を指し、投票立会人のような選挙事務に関与する者は含まれない。もっとも、規定違反がある場合でも、当該違反が「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」(公職選挙法205条1項)が認められない限り、選挙は無効とはならない。
重要事実
第10投票所において、投票開始前に投票箱の点検が行われたが、点検を行ったDは当該投票所の投票立会人であった。一般の選挙人に点検させた事実はなく、選挙規定に違反する状態であった。一方で、投票立会人Dが点検した際、投票箱が空虚であったことは事実として認定されていた。
事件番号: 昭和32(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙手続に法令違反がある場合であっても、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないときには、当該選挙は無効とはならない。投票箱の空虚確認漏れ等の手続上の瑕疵は、実質的に公正が担保されていれば選挙無効の原因を構成しない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、複数の手続上の問題が指摘された。具体…
あてはめ
本件では、投票立会人Dに点検をさせたに過ぎず、一般の選挙人に点検をさせていないため、施行令34条の規定に違反する。しかし、立会人Dによる点検の結果、投票箱が空虚であったことが認定されている。そうであれば、点検の主体の誤りという瑕疵があっても、投票の公正は実質的に確保されており、客観的にみて選挙の結果に異動を及ぼす可能性は認められない。
結論
施行令34条違反の事実は認められるが、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないため、本件選挙を無効とすべきではない。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続規定の違反(選挙規定の違反)が直ちに選挙無効に繋がるわけではなく、205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」の有無が判断の分水嶺となることを示す。施行令上の「選挙人」に事務関係者が含まれないという限定解釈も実務上重要である。
事件番号: 昭和30(オ)541 / 裁判年月日: 昭和30年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当選の効力を争う訴訟において、選挙無効の事由を請求原因として主張することは本来許されないが、原審が事実上の判断を示している場合には、直ちに判決に影響を及ぼす法令違背とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、当選の効力を争う訴訟(当選無効訴訟)を提起したが、その中で選挙自体の無効事由を請求原因とし…
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…
事件番号: 昭和36(オ)560 / 裁判年月日: 昭和36年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票箱の一部に施錠不能な破損があっても、内蓋の施錠や封印、保管状況等から不正混入の虞が否定される限り、選挙結果に影響を及ぼす事由には当たらない。また、同一筆跡と疑われる投票の存在のみでは、直ちに組織的な不正投票の事実を認定することはできない。 第1 事案の概要:村長選挙等の効力が争われた事案。投票…