判旨
投票箱の一部に施錠不能な破損があっても、内蓋の施錠や封印、保管状況等から不正混入の虞が否定される限り、選挙結果に影響を及ぼす事由には当たらない。また、同一筆跡と疑われる投票の存在のみでは、直ちに組織的な不正投票の事実を認定することはできない。
問題の所在(論点)
①投票箱の施錠不備が、選挙の結果に異動を及ぼす虞(選挙無効事由)に該当するか。②同一筆跡と疑われる投票の存在が、直ちに不正投票の混入を推認させるに足りるか。
規範
選挙の無効事由(公職選挙法等)に関し、投票の管理・執行に瑕疵が認められる場合であっても、投票箱の構造、封印の有無、保管状況、および投票用紙の真正性等の諸事象を総合的に考慮し、選挙の結果に異動を及ぼす客観的な虞がないと認められるときは、当該選挙を無効とすることはできない。
重要事実
村長選挙等の効力が争われた事案。投票箱の外蓋の掛金一方が破損し施錠不能であった。また、特定の候補者に対する有効投票の中に、同一筆跡と認められるものが複数組(20組40票等)存在し、これらが不正投票であると主張された。さらに、一部の投票用紙が正規のものではないとの主張もなされた。
あてはめ
①について、外蓋の一部が施錠不能であっても、内蓋に別途施錠設備があり、かつ箱全体に多数の紙片による封印が施されていた。また、開票までの保管状況も詳細に確認されており、外部から不正な投票が混入した事実は認められない。②について、数組の同一筆跡の存在はうかがわれるものの、その事実のみから直ちに多数の不正投票が組織的に行われたと断定することはできず、他にこれを裏付ける証拠もない。③投票用紙の真正性については、鑑定の結果、正規の用紙であると認められる。
結論
不正投票が混入して選挙の結果に異動を及ぼす虞があるとは認められないため、上告を棄却し、選挙を有効とした原審の判断を維持する。
事件番号: 昭和36(オ)586 / 裁判年月日: 昭和36年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙事務の手続に違法がある場合でも、投票箱の保管状況等の諸事情を総合考慮し、当該違法が選挙の結果に異動を及ぼす虞がないと認められるときは、選挙の効力は否定されない。 第1 事案の概要:ある選挙において、選挙長が開票事務を一時中止した。その際、投票箱の封印および旋錠が不十分な状態であったという手続上…
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続上の瑕疵(管理不備)が直ちに選挙結果の異動の虞(無効)に直結しないことを示す。事実認定のレベルで、封印の状況や保管の継続性が重視される点、および筆跡の類似性のみでは不正の証明として不十分であるとする判断指針として機能する。
事件番号: 昭和32(オ)708 / 裁判年月日: 昭和32年10月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙手続に法令違反がある場合であっても、それが選挙の結果に異動を及ぼすおそれがないときには、当該選挙は無効とはならない。投票箱の空虚確認漏れ等の手続上の瑕疵は、実質的に公正が担保されていれば選挙無効の原因を構成しない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、複数の手続上の問題が指摘された。具体…
事件番号: 昭和30(オ)540 / 裁判年月日: 昭和30年11月25日 / 結論: 棄却
公職選挙法施行令第三四条に「選挙人」とあるのは、投票所に投票のため来た一般選挙人を指すのであつて、投票立会人のごとき選挙事務の管理に関与する者を含まない。
事件番号: 昭和28(オ)1286 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙の投票において、特定の候補者の氏名が正確に記載されていない場合であっても、諸般の事情を考慮して当該候補者に対する投票であると合理的に認められるときは、これを有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:本件は選挙における投票の効力が争われた事案である。係争の投票6票について、特定の候補者Bの氏…