所論の不在投票用紙及び投票用封筒を交付するに際し選挙人名簿又は抄本と対照しなかつたという事実は原審も認めているけれども、しかし原判決の認定するところによれば、予め選挙人名簿に基き作成した投票所入場券を各地区の事情にもつとも通ずる駐在員をして選挙人名簿の抄本と対照して予め選挙人に交付してあり、不在者投票用紙及び投票用封筒を交付する際は、その交付請求者に右投票所入場券を提出させ適宜の発問によつて請求者が選挙人又はその同居の親族であるか否かを確めた上、投票用紙及び投票用紙封筒を交付する等事質上右名簿又は謄本と対照して交付したと異らない方法を執つたことが確認されるから結局において、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるとは認められない。
不在投票用紙及び投票用封筒を交付するに際し選挙人名簿又は抄本と対照しなくても選挙の結果に異動を及ぼす虞のない事例
判旨
不在者投票用紙の交付時に選挙人名簿と直接対照しなかった手続上の瑕疵があっても、実質的に同一の効果を持つ代替措置が講じられていれば、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるとは認められない。
問題の所在(論点)
不在者投票用紙の交付に際し、選挙人名簿との直接対照を欠いたことが、選挙の管理執行に関する違法として選挙を無効にすべき事由(選挙の結果に異動を及ぼすおそれ)に該当するか。
規範
公職選挙法(旧令含む)に基づく選挙の無効が認められるためには、選挙の規定に違反する事実があるだけでなく、その規定違反によって「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」があることが必要である。また、投票者側の違法行為(不在者投票における不正等)は、選挙の管理執行に関する違法とは解されない。
重要事実
不在者投票用紙及び投票用封筒を交付する際、管理者が選挙人名簿又は抄本と直接対照しなかった。しかし、当局は予め名簿に基づき作成した投票所入場券を、地域の事情に通じた駐在員が名簿抄本と対照した上で交付済みであった。交付時には当該入場券を提出させ、適宜の発問により本人確認を行っていた。また、不在者投票者の中に検察庁の取調べを受けた者が多数存在していた事案である。
事件番号: 昭和51(行ツ)57 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 破棄自判
一、不在者投票をしようとする選挙人は、不在者投票用紙等の交付を使者によつて請求することも許される。 二、選挙管理委員会が使者による不在者投票用紙等の交付請求を受理するにあたつてなすべき右使者と称する者が真実の使者であるかどうかの確認は、真実の使者であることを疑うに足りる特段の事情のない限り、その使者と称する者の選挙人何…
あてはめ
形式上は名簿との対照を欠くが、名簿に基づき発行された入場券の提出と発問による確認を経ており、実質的には名簿と対照して交付したのと異ならない。したがって、この手続上の不備が選挙結果に影響を及ぼすほど重大な瑕疵とはいえない。また、投票者側に違法(不正投票の疑い)があっても、それは選挙管理の瑕疵ではなく、本件選挙訴訟における無効原因には当たらない。
結論
不在者投票手続に一部不備があっても、実質的な本人確認が代替手段で行われていれば選挙の効力に影響せず、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、管理執行側の手続違反を主張する際、形式的な違反のみならず「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」という実質的な違法性が問われることを示す。手続の代替性が認められるかどうかが判断の分かれ目となる。
事件番号: 昭和43(行ツ)92 / 裁判年月日: 昭和44年7月15日 / 結論: 棄却
いわゆる選挙の人的一部無効が認められるのは、公職選挙法二〇五条一項により選挙の地域的一部無効を生じ、その結果、同条二項以下の規定により選挙の人的一部無効を生ずる場合に限る。
事件番号: 昭和35(オ)1467 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」とは主として選挙の管理執行に関する規定を指し、当選人決定の際の被選挙権の有無の判断に誤りがある場合は、選挙無効の訴えの対象にはならない。 第1 事案の概要:本件選挙において、選挙会は訴外Dに被選挙権がないものと判断し、同人を当選人と定めなかった。上告人は、…
事件番号: 昭和44(行ツ)2 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
選挙人にあらかじめ配布された入場券が住所不明として返戻された場合において、当該選挙人であるとして入場券を持参しない者が投票に来たときは、投票事務従事者において「その理由をただし」、また、本人であることの確認には生年月日の対照をもつてすることが、選挙事務の取扱いとして至当というべきであるが、これを欠いたからといつて、その…
事件番号: 平成1(行ツ)167 / 裁判年月日: 平成2年4月12日 / 結論: 棄却
不在者投票の立会人が、立会いをしつつ併せて不在者投票事務の補助執行に従事していたため、立会人の監視機関としての役割を十分に果たすことができない状態にあったときは、その間にされた不在者投票は、公職選挙法四九条一項同法施行令五六条一項、二項の規定に違反した違法のものというべきである。