不在者投票の立会人が、立会いをしつつ併せて不在者投票事務の補助執行に従事していたため、立会人の監視機関としての役割を十分に果たすことができない状態にあったときは、その間にされた不在者投票は、公職選挙法四九条一項同法施行令五六条一項、二項の規定に違反した違法のものというべきである。
不在者投票の立会人が立会いと併行して不在者投票事務の補助執行に従事し監視機関としての役割を十分に果たすことができない状態にあった場合と不在者投票の適否
公職選挙法49条1項,公職選挙法施行令56条1項,公職選挙法施行令56条2項
判旨
不在者投票の立会人が投票事務の補助執行に忙殺され、監視機関としての役割を十分に果たせない状態にあった場合、その不在者投票は実質的に立会人を欠くものとして違法となり、得票差等に照らし選挙結果に異動を及ぼすおそれがあるときは選挙無効の原因となる。
問題の所在(論点)
不在者投票の立会人が投票事務の補助を兼務していた場合、公職選挙法49条1項等に定める立会人の選任要件を実質的に欠き、選挙無効(同法205条1項)の原因となるか。
規範
公職選挙法及び同法施行令が執行機関(不在者投票管理者)のほかに監視機関(立会人)を置くとした趣旨は、選挙の自由と公正を確保することにある。したがって、立会人に選任された者が投票事務の補助執行に従事していたため、監視機関としての役割を十分に果たすことができない状態にあったときは、その不在者投票は実質的に立会人を欠いたものとして、公選法49条1項等に違反し違法となる。かかる違法な投票の存在が、当選者と次点者の得票数差等に照らし、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるときは、当該選挙は無効となる。
重要事実
村長選挙(当選人737票、次点者735票、差2票)において、村役場で行われた不在者投票(158票)の立会人(選管委員I及びH)が、立会いと並行して、選挙人名簿との照合、事由の審査、投票用紙の交付・説明、署名の確認といった不在者投票事務の補助執行を分担・継続していた。
事件番号: 昭和51(行ツ)57 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 破棄自判
一、不在者投票をしようとする選挙人は、不在者投票用紙等の交付を使者によつて請求することも許される。 二、選挙管理委員会が使者による不在者投票用紙等の交付請求を受理するにあたつてなすべき右使者と称する者が真実の使者であるかどうかの確認は、真実の使者であることを疑うに足りる特段の事情のない限り、その使者と称する者の選挙人何…
あてはめ
本件では、立会人I及びHは、投票事務の補助執行に常時従事しており、本来の職務である事務執行の監視に専念できる状況になかった。これは、監視機関と執行補助機関が混同されている状態であり、監視機関としての役割を十分に果たせない状態にあったと認められる。したがって、本件不在者投票158票は実質的に立会人を欠く違法な投票である。そして、この違法な投票数(158票)は当選人と次点者の得票差(2票)を大きく上回るため、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるといえる。
結論
本件選挙における不在者投票の手続には、立会人の制度的趣旨を没却する違法があり、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるため、本件選挙は無効である。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続規定の違反が「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」(公選法205条1項)があるかを判断する際の基準を示す。立会人の形式的な配置だけでなく、その「実質的監視機能」が損なわれていれば違法となる点、および違法投票数が得票差を上回れば「異動を及ぼすおそれ」が認められやすい点に射程がある。
事件番号: 昭和37(オ)697 / 裁判年月日: 昭和37年12月26日 / 結論: 棄却
一 証明書を提出することができない理由記載欄に「証明者なし」と記載した選挙人自身が作成した疎明書と題する書面を提出しただけでは、公職選挙法施行令第五二条第三項の疎明があつたとはいえない。 二 不在者の投票用封筒の表面および裏面またはそのいずれかに公職選挙法施行令第五六条第六〇条所定事項の記載のない投票は、受理すべきでな…
事件番号: 昭和27(オ)952 / 裁判年月日: 昭和28年3月19日 / 結論: 棄却
所論の不在投票用紙及び投票用封筒を交付するに際し選挙人名簿又は抄本と対照しなかつたという事実は原審も認めているけれども、しかし原判決の認定するところによれば、予め選挙人名簿に基き作成した投票所入場券を各地区の事情にもつとも通ずる駐在員をして選挙人名簿の抄本と対照して予め選挙人に交付してあり、不在者投票用紙及び投票用封筒…
事件番号: 昭和58(行ツ)148 / 裁判年月日: 昭和60年1月22日 / 結論: 破棄差戻
一 町選挙管理委員会が、公職選挙法二二条二項の規定により同町議会議員選挙の選挙時登録を行うに当たり、被登録資格の一つである住所要件につき、現実の移転を伴わない架空転入が大量にされたのではないかと疑うべき事情があるのに、調査対象者あてに文書照会をしたり、関係者の言い分を徴したのみで、右要件の有無を具体的事実に基づいて明ら…
事件番号: 平成13(行ヒ)205 / 裁判年月日: 平成13年12月18日 / 結論: 棄却
選挙の効力に関する争訟を審理する選挙管理委員会又は裁判所が,投票管理者が公職選挙法施行令63条3項に違反して投票箱に入れなかったために無効票と確定された不在者投票の内容について,いずれの候補者に対する投票であるかなどを取り調べ,その結果を選挙人が表明した意思として取り扱って公職選挙法205条1項に定める選挙の結果に異動…