一 不在者投票事務に従事する者を不在者投票に立ち会わせることは違法とはいえない。 二 不在者投票に立ち会つた者が投票用封筒の裏面に署名せず選挙事務補助者に記入させた違法があつたからといつて、それだけで選挙を無効とすべきではない。
一 不在者投票事務に従事する者を不在者投票に立ち会わせることの適否 二 不在者投票に立ち会つた者が投票用封筒の裏面に署名しなかつた違法と選挙の効力
公職選挙法施行令56条2項,公職選挙法施行令60条1項,公職選挙法205条1項
判旨
選挙管理委員会の書記が不在者投票の立会人となることや、投票用封筒の署名代筆、名簿抄本の誤り等の選挙規定違反があっても、選挙の自由公正が害されたといえず、当選の結果に影響を及ぼすおそれがない場合は、選挙無効とはならない。
問題の所在(論点)
不在者投票立会人の適格性、投票用封筒への署名代筆(施行令60条1項違反)、および選挙人名簿抄本の不備が、公職選挙法205条1項の選挙無効原因に該当するか。
規範
公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定に違反すること」があり、かつ「選挙の結果に異動を及ぼす虞があること」が認められる場合に限り、選挙は無効となる。手続上の規定違反があっても、それが直ちに選挙の自由公正を害するものといえず、得票差等に照らして当落の結果を左右する可能性がない場合は、選挙無効原因を構成しない。
重要事実
留萌市選挙管理委員会において、(1)書記が不在者投票の立会人となり、(2)不在者投票345票のうち288票について、立会人本人が署名せず未成年の臨時雇員が代筆した。また、(3)当日投票の対照に用いた選挙人名簿抄本に87名の登録者について原本との食い違いがあり、その結果、無資格者9名が投票するに至った。本件選挙の当落得票差は310票であった。
事件番号: 昭和35(オ)677 / 裁判年月日: 昭和35年9月22日 / 結論: 棄却
代理投票が投票管理者に対する適法な申請なくして行なわれた違法があつても、補助者一名が選挙人に代つて投票用紙に候補者の氏名を記載し他の補助者がこれに立ち会い、選挙人の指示する候補者の氏名を記載したものと認められる以上、右違法によつて選挙を無効とすべきではない。
あてはめ
(1)不在者投票の立会人について、法に厳格な選任規定や禁止規定はなく、書記が立ち会うことも直ちに違法とはいえない。(2)署名代筆は施行令違反であるが、投票のすり替えや真意に反する投票が行われた疑いはなく、自由公正を害したとはいえない。(3)名簿抄本の誤りは違法であるが、職員に悪意はなく、不正投票を看過した証拠もない。無資格者の投票数は9名に留まり、当落得票差310票に照らせば、選挙の結果に異動を及ぼすおそれはない。
結論
本件の各規定違反は、いずれも選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものとは認められないため、本件選挙を無効とすべきではない。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、手続的瑕疵(特に不在者投票や名簿管理)が認められた場合でも、それが具体的・客観的に当選の結果を覆す可能性(数的関連性)や選挙の公正を根本から覆す態様であるかを厳格に判断する際の基準として活用できる。
事件番号: 昭和39(行ツ)16 / 裁判年月日: 昭和39年12月10日 / 結論: 破棄自判
一 市議会議員選挙において、公職選挙法第一七三条および第一七四条(昭和三七年法律第一一二号による改正前のもの)の規定による候補者の氏名および党派別掲示に一候補者の所属政党を無所属と誤記した違法は、原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものと解すべきである。 二 選挙訴訟の係…
事件番号: 昭和44(行ツ)2 / 裁判年月日: 昭和45年7月16日 / 結論: 棄却
選挙人にあらかじめ配布された入場券が住所不明として返戻された場合において、当該選挙人であるとして入場券を持参しない者が投票に来たときは、投票事務従事者において「その理由をただし」、また、本人であることの確認には生年月日の対照をもつてすることが、選挙事務の取扱いとして至当というべきであるが、これを欠いたからといつて、その…
事件番号: 昭和51(行ツ)57 / 裁判年月日: 昭和51年10月8日 / 結論: 破棄自判
一、不在者投票をしようとする選挙人は、不在者投票用紙等の交付を使者によつて請求することも許される。 二、選挙管理委員会が使者による不在者投票用紙等の交付請求を受理するにあたつてなすべき右使者と称する者が真実の使者であるかどうかの確認は、真実の使者であることを疑うに足りる特段の事情のない限り、その使者と称する者の選挙人何…