判旨
身元保証人の賠償責任を定めるにあたり、被保証人の横領行為が使用者の監督不行届に乗じて行われた場合には、使用者の過失を参酌して賠償額を決定するのが相当である。
問題の所在(論点)
身元保証人の損害賠償責任の範囲を画定する際、使用者の監督不行届という事情をどの程度、あるいはどのように考慮すべきか。
規範
身元保証人の責任及びその金額を定めるにあたっては、使用者が被保証人の行為を知らなかったことについて、その監督方法が適切を欠き徹底していなかったという事情(監督不行届)がある場合には、これを過失として参酌(過失相殺の類推適用等)することができる。
重要事実
被上告人(組合)の従業員が、組合の不知の間に横領行為を行った。組合がこの横領行為を認知できなかった原因は、組合における従業員に対する監督方法が適切さを欠き、かつ徹底していなかったことにある。上告人らは当該従業員の身元保証人であったが、組合は身元保証人らに対して特段の通知義務を履行していなかった(ただし通知義務については原審で主張されていない)。
あてはめ
本件における横領は組合の不知の間に行われたものであるが、その不知自体が組合の監督不行届に起因するものである。このような場合、使用者の不注意が損害の発生や拡大に寄与しているといえる。したがって、身元保証人の賠償責任の有無や具体的な賠償額を算定する過程において、使用者の「監督不行届」を参酌の対象とすることは正当である。
結論
組合の監督不行届を参酌して身元保証人の賠償責任を制限した判断は正当であり、身元保証人の上告を棄却する。
実務上の射程
身元保証法5条に基づく裁判所の賠償額算定における裁量権の行使に関し、使用者の過失(監督上の不備)が有力な減額要素となることを認めた事例として位置付けられる。答案上は、身元保証人の責任制限の場面で「使用者の監督状況」という具体的要素を挙げる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和51(オ)876 / 裁判年月日: 昭和51年11月26日 / 結論: 棄却
一、使用者が身元保証法三条所定の通知義務を怠つている間に、被用者が不正行為をして身元保証人の責任を惹起した場合において、右通知の遅滞は、裁判所が同法五条所定の身元保証人の損害賠償責任及びその金額を定めるうえで斟酌すべき事情とはなるが、身元保証人の責任を当然に免れさせる理由とはならない。 二、使用者が身元保証法三条所定の…