判旨
身元保証人の責任に関し、被用者の監督について使用者に過失がある場合であっても、裁判所が諸般の事情を考慮して身元保証人の賠償責任の範囲を制限した上で、なお一定の責任を認めることは適法である。
問題の所在(論点)
使用者に被用者の監督上の過失がある場合、裁判所は身元保証法5条に基づき身元保証人の責任を一部認めることができるか、あるいは全部免除すべきか。
規範
「身元保証ニ関スル法律」第5条に基づき、裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるに当たり、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証をするに至った事由及びこれをするに際し払った注意の程度、被用者の任務又は身上の変化その他一切の事情を斟酌するものとする。
重要事実
被用者の不法行為等により損害を被った使用者(被上告人)が、身元保証人(上告人)に対して損害賠償を請求した。原審は、使用者側に被用者の監督について過失があることを認定した上で、身元保証人の責任を全部免除することなく、諸般の事情を考慮してその責任の範囲を一定程度に限定して認容した。これに対し、身元保証人が責任の全部免除を求めて上告した。
あてはめ
本件において、使用者側に監督上の過失が認められるものの、その事実のみをもって直ちに身元保証人の責任が当然に全て免除されるものではない。裁判所が身元保証法5条の規定に従い、使用者の過失の程度やその他の諸般の事情を総合的に評価した結果、責任の全部を免除せずに一定の範囲で賠償義務を課した判断は、同法の趣旨に合致しており、裁量権の逸脱はないと解される。
結論
使用者に監督上の過失がある場合でも、諸般の事情に照らし、身元保証人の責任を全部免除せず一定の範囲で認めることは違法ではない。
実務上の射程
身元保証人の責任制限に関するリーディングケース。答案では身元保証法5条の適用場面で、使用者側の過失を理由とする「免責」ではなく、過失相殺に類似した「責任の減免(範囲の画定)」という枠組みで論じる際に活用する。
事件番号: 昭和34(オ)855 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法715条1項但書に基づく使用者責任の免責が認められるためには、被用者の監督について相当の注意を尽くしたことを要するが、監督責任を尽くしたといえない場合には免責されない。また、被害者に過失がある場合には、民法722条2項により賠償額を減額することができる。 第1 事案の概要:上告会社(使用者)の…