判旨
身元保証人の賠償責任の範囲を決定するにあたり、使用者の通知義務懈怠のみならず、損害発生時における使用者自身の過失も「身元保証ニ関スル法律」5条に基づき斟酌されるべきである。
問題の所在(論点)
身元保証人の賠償責任の範囲を画定する際、身元保証法5条により、使用者の通知義務懈怠以外の過失(被害発生時の過失等)を斟酌することができるか。
規範
身元保証人の責任の有無及びその額を定めるにあたっては、使用者の身元保証法3条に基づく通知義務の懈怠の有無のみならず、損害の発生に関する使用者の過失(管理上の過失等)をも考慮し、同法5条に基づき賠償責任を軽減、または免除することができる。
重要事実
D銀行の従業員の身元保証人であった上告人に対し、同銀行が金100万円の損害を被ったとして損害賠償を請求した。D銀行には身元保証法3条に定める通知義務の懈怠が認められたほか、損害発生時において銀行自らにも過失があった。原審はこれらの事情を斟酌し、上告人の賠償額を30万円と限定した。
あてはめ
被上告人であるD銀行には、身元保証法3条に基づく通知義務の懈怠が認められる。さらに、損害が発生した際におけるD銀行自らの不注意(過失)も認められる。身元保証法5条は、一切の事情を考慮して責任の有無・額を決定すべきとする趣旨であるから、これらの事情はすべて身元保証人の責任を制限する事情として適切に評価されるべきである。したがって、100万円全額ではなく、その3割にあたる30万円を賠償額とした判断は相当である。
結論
身元保証人の賠償責任を全免すべきではなく、使用者の過失等を考慮して一部の賠償責任を認めるべきである。
実務上の射程
身元保証法5条による「一切の事情」の考慮において、債権者(使用者)側の過失を広く斟酌できることを示した。答案上は、身元保証人の責任制限の場面で、通知義務懈怠だけでなく被害発生状況の監督不備を指摘する際の根拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)973 / 裁判年月日: 昭和34年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被用者に身元保証法上の通知義務違反がない場合、使用者の監督過失が認められるとしても、直ちに身元保証人の賠償責任が否定されるものではない。 第1 事案の概要:被上告会社(使用者)の被用者である訴外Dが横領行為を行った。身元保証人である上告人は、被上告会社がDの不適格性(身元保証法3条1号・2号)を察…