一 身元保証契約は、その中で保証人の責任の限度が約定されていなくても、公序良俗に反し無効であるとはいえない。 二 身元保証ニ関スル法律第五条は、同条所定の事情を職権探知事項とする趣旨ではなく、右の事情が訴訟にあらわれた資料によつて認められるときに、裁判所は職権をもつてもこれを斟酌すべきものとするにとどまると解すべきである。
一 保証人の責任の限度に関する約定を欠く身元保証契約の効力 二 身元保証ニ関スル法律第五条の法意
身元保証ニ関スル法律5条,民法90条
判旨
身元保証ニ関スル法律5条に基づく身元保証人の責任制限は、訴訟資料に現れた事情を当事者の主張を待たず職権で斟酌できるが、裁判所に事実の職権探知義務までを課すものではない。
問題の所在(論点)
1.責任限度額の定めのない身元保証契約が公序良俗に反し無効となるか。2.身元保証法5条に基づく裁判所の斟酌義務の性質は、職権探知までを包含するものか、あるいは職権斟酌(弁論主義の範囲内での判断)にとどまるか。
規範
1.身元保証契約において責任限度額の約定がないことのみをもって、直ちに公序良俗に反し無効とはならない。2.身元保証法5条は、同条所定の事情が訴訟上の資料によって認められる場合、裁判所は当事者の主張を待たず、職権をもって賠償責任の有無及び範囲を定めるにあたり右事情を斟酌すべきことを定めたものである。しかし、同条は裁判所に対し、積極的な職権探知を命じたものではない。
重要事実
上告人らは、被雇用者の身元保証人となったが、雇用主から損害賠償を請求された。上告人らは、身元保証契約に責任限度額の定めがないことが公序良俗に反し無効であると主張した。また、身元保証法5条に基づき、身元保証に至った事由や注意の程度について裁判所が職権で十分に調査・斟酌すべきであったにもかかわらず、これを怠ったとして原判決の違法を訴え上告した。
あてはめ
1.身元保証法5条により、裁判所は保証人の責任を制限・軽減できる規定を有している。したがって、約定による限度額がなくても、保証人が無制限に責任を負うことにはならないため、公序良俗違反には当たらない。2.本件において、保証に至った事由等について特に斟酌すべき事情は原審において認定されておらず、これを認めるべき証拠資料も提出されていない。身元保証法5条の趣旨は、提出された資料から判明する範囲で職権斟酌すれば足りるものであり、裁判所が自ら証拠を探索する職権探知義務までは負わない。よって、原審が事情を斟酌しなかったことに違法はない。
結論
本件身元保証契約は有効であり、かつ、裁判所が職権で特段の事情を探知しなかったとしても身元保証法5条違反の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
身元保証人の責任制限について、弁論主義の例外(職権斟酌事項)としての性質を明らかにした。答案上は、当事者が明示的に責任軽減の主張をしていなくても、記録上の事実から身元保証法5条を適用できる根拠として引用できる。一方で、証拠提出責任自体は依然として当事者にあることを意識した構成が必要である。
事件番号: 昭和31(オ)775 / 裁判年月日: 昭和35年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】身元保証人の責任に関し、被用者の監督について使用者に過失がある場合であっても、裁判所が諸般の事情を考慮して身元保証人の賠償責任の範囲を制限した上で、なお一定の責任を認めることは適法である。 第1 事案の概要:被用者の不法行為等により損害を被った使用者(被上告人)が、身元保証人(上告人)に対して損害…