判旨
被用者に身元保証法上の通知義務違反がない場合、使用者の監督過失が認められるとしても、直ちに身元保証人の賠償責任が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
使用者に被用者の監督上の過失が認められる場合、身元保証法に基づく通知義務違反が認められないときであっても、身元保証人の賠償責任が当然に否定されるか。
規範
身元保証人の責任は、使用者が身元保証法3条に基づく通知義務を履行している限り、被用者の監督について使用者に過失があったとしても当然には否定されない。使用者の過失の有無及び程度は、同法5条に基づく賠償額の算定において考慮されるべき事情の一つにとどまる。
重要事実
被上告会社(使用者)の被用者である訴外Dが横領行為を行った。身元保証人である上告人は、被上告会社がDの不適格性(身元保証法3条1号・2号)を察知しながら通知義務を怠ったと主張したが、原審では通知義務の対象となる事由の覚知や事実の存在は認められなかった。一方で、被上告会社にはDら集金人の監督について過失があったことが認定されていた。
あてはめ
本件では、被上告会社において身元保証法3条1号・2号所定の事由を覚知した事実は認められず、法定の通知義務不履行は存在しない。被上告会社に集金人の監督上の過失が認められるものの、通知義務違反という特段の事情がない以上、身元保証人の責任を全面的に免れさせる根拠とはならない。使用者の過失は、身元保証人の責任の有無そのものを左右するものではなく、賠償責任の範囲を制限する要素として考慮されるべき性質のものである。
結論
被上告会社に監督上の過失があるとしても、身元保証人である上告人の賠償責任を全く否定することはできない。
実務上の射程
身元保証人の責任制限に関する判断枠組みを示す。使用者の過失があっても責任がゼロになるわけではないため、答案上は身元保証法5条の「一切の事情」として過失相殺的に責任を減免する構成を採る際の根拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)504 / 裁判年月日: 昭和34年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】身元保証人の賠償責任の範囲を決定するにあたり、使用者の通知義務懈怠のみならず、損害発生時における使用者自身の過失も「身元保証ニ関スル法律」5条に基づき斟酌されるべきである。 第1 事案の概要:D銀行の従業員の身元保証人であった上告人に対し、同銀行が金100万円の損害を被ったとして損害賠償を請求した…