判旨
代表取締役間に職務分担がある場合、他の代表取締役に背任行為等の義務違反がなく、かつ、その放置が会社倒産の原因となっていない限り、監視義務違反による損害賠償責任は認められない。
問題の所在(論点)
代表取締役間に職務分担がある場合において、他の代表取締役の業務執行を監視しなかったことが、任務懈怠(監視義務違反)や不法行為として損害賠償責任を発生させるか。
規範
代表取締役間に職務分担または代表権の制限がある場合、他の代表取締役に背任行為(善管注意義務・忠実義務違反)が存在し、これを故意または重過失によって放置したことが会社の損害(倒産等)の原因となっていない限り、任務懈怠(会社法423条1項等)に基づく損害賠償責任は成立しない。また、自ら法規違反を行い、または他者の違法行為に加担して会社を破綻させた等の事情がない限り、一般不法行為(民法709条)も成立しない。
重要事実
上告人(原告・控訴人)は、会社が倒産したのは代表取締役Dの背任行為と、それを放置した被上告人(被告・被控訴人)の責任であると主張して、損害賠償を求めた。会社内部では代表取締役間の職務分担が存在しており、被上告人は実務上、Dの業務運営に直接関与していなかった。原審は、Dに背任行為があったとの立証がなく、むしろ会社の倒産はDの背任によるものではないと認定した。
あてはめ
本件では、会社の業務運営においてDに善管注意義務または忠実義務違反(背任行為)があった事実は認められない。また、仮に職務分担がある場合でも、他の代表取締役(D)に背任行為があり、かつその行為が会社の倒産の原因となっている状況下で、被上告人が故意・重過失によりこれを放置したという事実も認められない。被上告人自らが法規違反を行い、またはDの違法行為に加担した事実もないため、行為の違法性は認められないと解される。
結論
被上告人には、任務懈怠(監視義務違反)による損害賠償責任も、民法上の不法行為責任も成立しない。
実務上の射程
会社法上の役員の監視義務を論ずる際の射程を画する。特に職務分担がある場合、他の役員の「不正(義務違反)」の存在が監視義務違反の前提となること、および損害との因果関係が必要であることを示す。答案では、任務懈怠の有無を判断する際の「職務分担」の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1175 / 裁判年月日: 昭和44年11月26日 / 結論: 棄却
一、商法二六六条ノ三第一項前段の規定は、株式会社の取締役が悪意または重大な過失により会社に対する義務に違反し、よつて第三者に損害を被らせたときは、取締役の任務塀怠の行為と第三者の損害との間に相当の因果関係があるかぎり、会社が右任務解怠の行為によつて損害を被つた結果、ひいて第三者に損害を生じた場合であると、直接第三者が損…