判旨
父母が共同して親権を行使すべき場合(民法818条3項)において、一方が売買契約を締結する際に他方が同席して反対せず、測量等の事後行為にも立ち会っていたときは、特段の事情がない限り、共同して親権を行使したものと認められる。
問題の所在(論点)
父母が共同で親権を行うべき場合に、一方の親が行った法律行為について、他方の親が同席して反対しなかったという事実をもって、民法818条3項の「共同して」親権を行使したものといえるか。
規範
民法818条3項が定める親権の共同行使は、必ずしも父母が常に同時に意思表示を行うことを要しない。一方が行った法律行為に対し、他方が明示的または黙示的に同意を与えていると認められる場合には、特段の事情がない限り、共同して親権を行使したものと解するのが相当である。
重要事実
未成年者である上告人Aの不動産売買契約において、Aの母Dは契約の場に同席していたが、売買契約について何ら反対の意思を表示しなかった。また、契約後に行われた実地の測量においても、Dはこれに立ち会いながら特段反対しなかった。その後、本件売買が親権の共同行使(Aの父母EおよびDによる行使)を欠き無効であるかが争われた。
あてはめ
母Dは、売買契約という重要な法律行為の場に同席しながら反対せず、さらに測量という契約内容を実現する行為にも立ち会って反対しなかった。このような態度は、父Eが行った売買について、母Dが親権者として承諾を与えていたものと評価できる。したがって、他に特段の事情が認められない本件においては、父母が共同して親権を行使したものといえる。
結論
本件売買契約は親権の共同行使の要件を充足しており、有効である。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)704 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法826条にいう利益相反行為に該当するか否かは、行為の動機や実質的な利害関係ではなく、もっぱら行為の外形から判断すべきである。 第1 事案の概要:親権者である父Dが、未成年の子である上告人の代理人として、第三者Fとの間で本件不動産の売買契約(甲1号証)を締結した。この行為について、上告人側は、実…
共同親権の原則に反する行為の効力が争われる場面で、明示的な共同署名等がなくとも、黙示的な承諾や事前の合意、事後の追認的な態度から共同行使を認定する際の論拠となる。実務上は、共同行使を欠く行為(825条ただし書等の問題を含む)を回避する事実認定の枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和28(オ)362 / 裁判年月日: 昭和31年5月22日 / 結論: 破棄差戻
父に代り世帯主として家政一切を処理している長男が、父に無断でその所有の山林を売却した場合において、右長男がその以前にも同一相手方に対し父所有の山林を売却しその履行が無事完了されているような事実があるときは、右相手方が売主家出入りの者であつて右売買の事実につき直接父に確めなかつたとしても、相手方に必ずしも右長男に山林売買…
事件番号: 昭和41(オ)79 / 裁判年月日: 昭和42年4月25日 / 結論: 棄却
親権者が、その経営する事業につき、第三者の援助を仰ぎたいと考えて、子の財産を右第三者に贈与する契約を締結したとしても、右は親権者の単なる内心の意図にすぎず、民法第八二六条の利益相反行為にはあたらない。
事件番号: 昭和33(オ)968 / 裁判年月日: 昭和35年2月25日 / 結論: 棄却
一 親権者たる父母の一方に民法第八二六条第一項にいう利益相反関係があるときは、利益相反関係のない親権者と同項の特別代理人とが共同して子のための代理行為をなすべきである。 二 甲が乙の親権者として、自己の事業上の債務のため乙所有の不動産を 代物弁済として他に譲渡する行為は、乙が甲の事業により生活上の利 益を受けており、そ…