判旨
賃借人が目的物の所有権を取得した場合には、特段の事情がない限り、混同(民法520条)により賃貸借関係は当然に消滅する。
問題の所在(論点)
賃借人が売買等により目的物の所有権を取得した場合、それまでの賃貸借関係はどうなるか(民法520条の混同の成否)。
規範
同一の権利(債権)について債権者および債務者が同一人に帰属したときは、その債権は消滅する(民法520条)。賃貸借契約において、賃借人が目的物の所有権を取得し、賃貸人としての地位を兼ねるに至った場合、反対の利益を保護すべき特段の事情がない限り、当該賃貸借関係は混同により当然に消滅する。
重要事実
被上告人は、昭和26年7月23日、売買によって本件建物の所有権を取得した。しかし、それ以前から被上告人は当該建物を賃借していた。その後、上告人側は賃貸借契約の解除を主張したが、すでに被上告人が所有権を取得していたため、賃貸借の存否が争点となった。
あてはめ
被上告人が本件売買により建物の所有権を取得したことにより、被上告人は「賃貸人」としての地位と「賃借人」としての地位を併せ持つことになった。この場合、自己に対して債務を負担し、あるいは自己に対して権利を行使するという二面的な関係を維持する実益はない。したがって、法理上、混同により当該賃貸借関係は当然に消滅したものと認められる。その後に上告人が行ったとされる契約解除の意思表示は、既に消滅した契約を対象とするものであり、効力を生じない。
結論
被上告人が建物の所有権を取得した時点で、賃貸借関係は混同により消滅する。よって、その後の解除主張は認められない。
実務上の射程
混同(民法520条)の原則的な帰結を示す。ただし、実務上は、当該債権を消滅させることが第三者の権利(対抗要件を備えた転借権や抵当権など)を害する場合には、例外的に混同による消滅が否定される点に注意が必要である。本判決は、そのような特段の事情がない場合の基本原則を確認したものといえる。
事件番号: 昭和34(オ)44 / 裁判年月日: 昭和38年3月12日 / 結論: 棄却
所有権移転登記の共有名義人を被告として当該登記の抹消登記手続を求める訴訟は、固有必要的共同訴竈訟と解すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)724 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の登記原因が虚偽であっても、その登記が現在の真実の権利関係と合致するものであるならば、当該登記は有効である。 第1 事案の概要:被上告人B1は、本件家屋の所有権を家督相続により適法に取得した。一方で、本件家屋についてはB2を権利者とする所有権取得登記がなされていたが、その登記原因とされた贈与…
事件番号: 昭和27(オ)295 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
抵当権実行による競売手続において競落により不動産を取得した者およびその者から右不動産を買受けた者を共同被告として右不動産の所有者として抵当権の効力を否定する者から各所有権取得登記の抹消を求める訴は、訴訟の目的が共同訴訟人の全員につき合一にのみ確定すべき場合に当らない。
事件番号: 昭和37(オ)904 / 裁判年月日: 昭和40年12月21日 / 結論: その他
一 甲が地主丙から賃借中の土地上に所有する家屋を乙に贈与し、右事実を前提として、甲もみずから責任を持つ旨口添をして乙丙間に該土地の賃貸借契約が締結され、爾来その関係が九年余にわたつて継続してきた等判示のような事実があつたとしても、丙が右家屋を甲から買い受けてその旨の移転登記を経由するまでの経緯について判示の事情があると…
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。