判旨
農地委員会は、遡及買収申請に資格上の瑕疵がある場合であっても、自創法6条の5に基づき職権で買収計画を定めることができるため、当該買収処分が当然無効になることはない。
問題の所在(論点)
遡及買収の申請者に資格がない等の手続上の瑕疵がある場合に、当該買収計画および買収処分が当然無効となるか。また、農地委員会の職権による買収決定の可否が問題となる。
規範
農地委員会が農地の遡及買収計画を定めるに際しては、仮に申請者に申請資格がなかったとしても、自開法(自創法)6条の5に基づく職権によって買収計画を策定することが可能である。したがって、申請手続上の瑕疵が存在するからといって、直ちに当該買収処分が当然無効となるものではない。
重要事実
上告人とDとの間には農地の賃貸借契約が存在しており、当該契約は適法に解約されていなかった。その後、Eが当該農地について遡及買収の請求を行った。上告人側は、Eには遡及買収申請の資格がないこと等を理由に、本件買収計画および買収処分の無効を主張して争った。
あてはめ
本件では、賃貸借契約が存続しており、Eによる遡及買収申請が行われた。仮にEに申請資格が欠けていたとしても、農地委員会には自創法6条の5により職権で買収計画を定める権限が付与されている。判決文によれば、原審の認定した諸事情に照らせば、委員会が職権で行使し得る範囲内での判断といえる。したがって、申請資格の有無という点のみをもって買収処分の効力を否定することはできない。
結論
本件買収計画および買収処分は当然無効とはいえず、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の効力を争う際、申請資格等の手続的要件に瑕疵があっても、行政庁に職権による処分権限が認められる場合には、その瑕疵が直ちに処分の無効事由(重大かつ明白な瑕疵)とはならないことを示唆している。実務上は、処分の根拠法における職権行使の可否を確認する際の論拠となる。
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…
事件番号: 昭和31(オ)362 / 裁判年月日: 昭和35年9月15日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に対する異議申立を却下する決定があつたことを申立人が知り、法定の期間内に訴願を提起し、訴願棄却の裁決があつた後に買収令書が交付された場合には、異議却下決定の謄本が申立人に送付されていなかつたという瑕疵は、買収令書の交付による買収処分の無効原因ないし取消原因とはならない。 不在地主がその所有する小作地を買…
事件番号: 昭和32(オ)116 / 裁判年月日: 昭和33年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合でも、その後に正当な手続を経て瑕疵が補完され、処分時において適法な状態が確保されているならば、当該処分は有効なものとして存続し得る。 第1 事案の概要:農地委員会が土地の買収計画を定め、異議申立を却下した後、上告人は県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は法定期間経過後…
事件番号: 昭和33(オ)91 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消事由にすぎない瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が処分を当然無効ならしめるほどの重大かつ明白なものでない限り、当該処分は当然には無効とならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分に以下の無効原因があると主張した。(1)県係員の虚偽指示に基づく買収計画、(2)異議却下時の農地委…
事件番号: 昭和31(オ)762 / 裁判年月日: 昭和33年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】登記簿上の所有者を対象とした農地買収処分は、真実の所有者と異なる場合であっても当然無効とはならず、出訴期間内に取消訴訟を提起しない限り、その効力を争うことはできない。 第1 事案の概要:上告人の所有地であった本件農地につき、登記簿上はD合資会社の所有名義となっていた。政府は登記に基づき、D社を対象…