一 農地買収計画に対する異議申立を却下する決定があつたことを申立人が知り、法定の期間内に訴願を提起し、訴願棄却の裁決があつた後に買収令書が交付された場合には、異議却下決定の謄本が申立人に送付されていなかつたという瑕疵は、買収令書の交付による買収処分の無効原因ないし取消原因とはならない。 不在地主がその所有する小作地を買収された後、町村合併により在村となつても、これにより買収処分の効力に影響をきたすものではない。 二 不在地主がその所有する小作地を買収された後、町村合併により在村となつても、これにより買収処分の効力に影響をきたすものではない。
一 異議却下決定謄本の不送付と農地買収処分の瑕疵 二 不在地主がその所有する小作地を買収された後町村合併により在村地主となつた場合と右買収処分の効力 不在地主がその所有する小作地を買収された後町村合併により在村地主となつた場合と右買収処分尾効力。
自作農創設特別措置法7条,自作農創設特別措置法施行規則4条,行政事件訴訟特例法1条
判旨
行政手続上の書類送付等の規定が、当事者に不服申立ての機会を確保することを主たる目的とする場合、既に当事者が処分を知り不服申立てを行っているならば、当該手続の欠如は処分の効力に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
行政手続上の規定(決定書謄本の送付義務)に違反した瑕疵がある場合、その瑕疵が当該行政処分の効力(無効または取消事由)に影響を及ぼすか。
規範
行政処分に際して定められた通知・送付手続の趣旨が、主として処分の存在を相手方に知らせて不服申立ての機会を与えることにある場合、相手方が既に処分の成立を認知し、実際に不服申立ての手続を履践して実体的な裁決を受けているのであれば、手続規定の趣旨は実質的に充足されている。この場合、当該手続の欠如という瑕疵は、処分の無効原因とはならず、また取消事由にもならない。
重要事実
事件番号: 昭和31(オ)235 / 裁判年月日: 昭和32年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地委員会は、遡及買収申請に資格上の瑕疵がある場合であっても、自創法6条の5に基づき職権で買収計画を定めることができるため、当該買収処分が当然無効になることはない。 第1 事案の概要:上告人とDとの間には農地の賃貸借契約が存在しており、当該契約は適法に解約されていなかった。その後、Eが当該農地につ…
自作農創設特別措置法に基づく買収処分に対し、上告人が異議を申し立てた。同法施行規則4条は、異議申立人に対して決定書謄本を送付すべき旨を定めていたが、本件では謄本が送付されなかった。しかし、上告人は農地委員会からの通知によって異議却下決定の成立を現に知っており、これに対してさらに訴願を提起した。訴願庁はその訴願を受理し、実体的な棄却裁決を行っていた。
あてはめ
自創法施行規則4条が決定書謄本の送付を定めた趣旨は、申立人に処分の存在を知らせ、さらなる訴願提起の機会を保障することにある。本件では、上告人は謄本の送付を受けずとも、通知により異議却下の事実を認識し、現に訴願を提起して実体裁決を受けている。したがって、規定の趣旨は既に充足されており、謄本未送付の瑕疵は権利保護の観点から無視しうる軽微なものにとどまる。また、処分当時に不在地主であった以上、その後の町村合併等による属性変更は適法に成立した処分の効力を左右しない。
結論
決定書謄本の未送付という手続上の瑕疵は、本件買収処分の無効原因とならず、取消事由にもならない。
実務上の射程
手続上の瑕疵と処分の効力に関するリーディングケースの一つ。手続規定の「趣旨」を認定し、当該事案においてその趣旨が「実質的に充足」されているかを判断する枠組みは、現代の行政手続法違反の事案でも応用可能である。
事件番号: 昭和32(オ)116 / 裁判年月日: 昭和33年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合でも、その後に正当な手続を経て瑕疵が補完され、処分時において適法な状態が確保されているならば、当該処分は有効なものとして存続し得る。 第1 事案の概要:農地委員会が土地の買収計画を定め、異議申立を却下した後、上告人は県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は法定期間経過後…
事件番号: 昭和33(オ)446 / 裁判年月日: 昭和36年5月4日 / 結論: 破棄差戻
一 村農業委員会の議決を経ないで作成された農地買収計画が公告され、所定の期間縦覧に供され、右期間の満了前に原案どおり買収計画を樹立する旨の委員会の議決が成立し、しかも農地所有者が計画の樹立を知り行政上の不服手段を尽し得たという事実関係の下においては、たとえ、公告当時においては計画樹立につき委員会の議決がなされていなかつ…
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…